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八、重なる手
静かな間を破り、カカシは額宛てを取りベストを脱いで立ち上がった。
突然何をするのだとイルカは眉を寄せるが、黙って見ていた。
「こいつですか。」
揺れた空気にカカシが消え、若い男が現れた。
ひと回り細い体に今より少し長く赤い髪で左目を隠し、所在なげに立つ当時の姿にイルカは両手で口を抑えて後ずさった。
「カ…。」
震えるイルカの前にしゃがみ、右目がよく見えるように顔の角度を変える。
「俺も青い目で、暗部で、雷のチャクラで、あの場所にいました。」
カカシはふっと元の姿に戻り、四つん這いでイルカの体の両脇に手を着いた。
「試してみますか。」
イルカの口元を覆う手を外し、カカシはそっと口付けた。ねっとりと深く舌を追うと、イルカが舌を絡め胸を寄せて答えた。
離した唇から漏れる息に、カカシは忘れた夢を思い出した。
あの時、カカシは少女を愛した。若さゆえのいっときの劣情だ、それに女の素性は一切知らないと、忘れさせられた。
イルカの服を剥ぎ取り、カカシは胸にしゃぶりつく。イルカの手がカカシの服を捲り上げ、息継ぎに顔を上げた間に脱がすタイミングも昔通りだ。
「布団じゃなくてごめん。」
と二人の服をイルカの体の下に敷く気づかいに大人になったんだ、とイルカは背中に回した腕に力を込めた。
ああ、あのチャクラだ。
ゆうるりと腰を回してイルカの中を掻き回すカカシに、触れ合う体は熱く反応する。
やっと見付けた。とそれぞれ思い抱き締め合った。
激しく突くと、イルカの声が二階に聞こえる程上がる。カカシは指を噛ませて一気に追い立てた。肉を打つ音にぐじゅぐじゅと水音が重なる。
「一緒に。」
耳元に囁くとイルカがカカシの腰に脚を絡め、繋がりが深くなった。きゅうと膣が締まり、カカシは限界を迎える。
はっ、と全てを吐き出し力を抜くとイルカも手足を投げ出した。
ずる、と抜かれた感覚にイルカが鼻に掛かった声を出し、カカシの頬に手を伸ばす。
「貴方を満足させたと思うだけで、私は幸せでした。」
「あんな酷い状況で、俺のためにそう思ってくれていたなら、これからは俺が貴女のために思っていたい。」
口付けてイルカはカカシの手を取った。
「私、カカシ先生は最初から除外してました。」
裸ついでに風呂へと案内し扉を閉めようとしたイルカを、カカシは中へ引っ張り込んだ。
「うん、まさかね。」
シャワーを全開にして音を消す。
今度は後ろから、とカカシはイルカを浴槽の縁に手を付かせ、石鹸の泡で全身を撫でながら追い上げた。
前屈みになって尻を突き出したイルカに、カカシは先だけ入れては引いてと繰り返し焦らす。
早く、と聞こえた声に腰を掴んで奥まで射し込むと、イルカの背がしなり中のものを締め付けた。
熱くて我慢できないと切羽詰まったカカシに、離さないからとイルカの襞が吸い付く。

二度目の吐精でカカシは精魂尽きて、居間に寝転んでしまった。
微笑みカカシの濡れた髪を拭うイルカを引き寄せて、カカシはまなみと手を握り通じ合った話をした。
「やっぱり親子だからなんですよ。」
イルカは不愉快でしょうけど、と話し出した。
全ての男と交わったわけではなく、肌を合わせればチャクラは判ったという。ひと晩まなみを置いておけないから、受付や報告の際に声を掛け空き部屋に誘い込んでいた。
カカシに見られた時も、口で処理をして確かめただけだったのだ。
乳を揉ませる位はさせましたけど、と言われたカカシはゲンマが怒る訳だよなあ、と嫉妬を剥き出しにイルカの首に無言で噛み付いた。パチパチと小さな光を出す指先を見せて、二度と誰にも触らせないと約束させた。
たった今から体と心は別物じゃないですよ、とイルカも上目使いに責める。知らない女達から暴言を吐かれていた、と指折り数えて教えるとカカシは笑いで誤魔化した。

二人の道は重なった。
違う方向ではあるが修羅場を潜り抜けてきた二人には、もう怖いものはない。後は死が二人を分かつまで。
「カカシ先生は、私の担当クラスはご存じですか?」
「部下のあいつらに聞いたけど、凄いんだね。」
「まなみを産んで育てるために、私はアカデミー教師を目指しました。父親を探す手掛かりはチャクラでしたから、必死に勉強した結果のついでです。」
まなみのお守りのゲンマが可哀想でしたけど、と思い出し笑いにカカシも想像しつられて笑う。
「ゲンマの子の時には、俺が子守りしてやろうかね。」
「遠い話じゃないでしょうから、安請け合いはしない方がいいですよ。ゲンマなら火影様にも子どもを背負わせると思いますし。」
やりそう、とひとしきり笑って落ち着くとカカシは帰る事にした。
まなみにどう言おうか、と見送るイルカは迷いつつ。
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