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十三
カカシ以外は嫌だと言ったイルカの言葉にかっと頬が熱くなり、我を忘れた。
性急な荒々しい手つきだが待ち望んだカカシの愛撫にイルカも自然に体が反応し、初めて自分からカカシの腰に脚を絡めた。離さないでと背中に回した手の爪が、白く傷の無い皮膚に喰い込む。
ただお互いを求める二人の息遣いがリズムを刻み、共に果てるべく突いて締めてを繰り返し、それはやがて頂点へ。
イルカが一際大きな声を上げた瞬間、膣が締まって脚を痙攣させた。カカシは突き上げを止め、隙も無い程竿を押し込むとありったけの精を奥に飛ばして果てた。
するりとイルカの手足が滑り落ち、意識を飛ばして初めて膣だけで達したと判ったカカシは、嬉しさに笑いがこみ上げる。
覗いた虚ろな目はカカシを写さず、昨夜の黒い月のようだった。そう、樹上で敵を待つ間に雲の切れ間に見えた月は、不気味に鈍く黒い光に包まれていた。
あの世に囚われる不吉な月だとその時の部下が言ったが、カカシは笑って敵を皆殺しにした。そして部下には敵にとってだろ、と言ってその場を後にしたのだ。
だが帰還途中で黒い月に初めての夜のイルカの目を思い出し、矢も盾もたまらず勝手に隊を離れて郭に向かっていた。二日眠らず体は重かったが、イルカを思うだけで脚は動いた。

初めてのオーガズムはイルカには衝撃的だった。朦朧とした頭は思考を放棄し、余韻で敏感なままの五感が充足感に包まれながらもカカシをまだ求める。
「もっと…。」
カカシの首に腕を回したまま囁き、喉仏に噛み付く。獣が相手を服従させる為の行為に、イルカに喰われるのもいいかもしれないと、カカシはうっとりと目をつむった。
体の中心にまた熱が集まり、カカシの分身は力強く上を向いている。治まらない火照りにカカシは肩で息を吐き、イルカの片脚を高く上げた。陰部が口を開き、中で混ざった二人の淫汁がぐちゃ、と音をたてた。
片膝を立て陰茎を穴めがけて一気に押し込むと、張り出した先端が溢れる程の液でするりと入った。きゅうと締まる膣壁に捲れた皮がカカシの脳に快感を直接伝える。
上げた脚を肩に乗せてひたすら腰を打ち続けた。もっと、もっと、高みへ。
イルカの片手がカカシを探して伸ばされる。その手を掴み指を絡めて握った瞬間に、二人同時に弾けた。
じわりと汗と心地好い疲労が体中に広がり、カカシはイルカを抱き締め布団に転がった。
慈しむような笑顔の優しい口付けに、イルカは錯覚しそうな自分を押し留めた。これはただの処理だ、夢を見てはいけないと。
それでも今カカシの腕の中に居るのは自分なのだと安心し、仮初めの愛を体中に受けた疲労に自然に瞼が下りる。

目が覚めると薄暗い夕方で、イルカはもうカカシが居ない事に落胆したが当たり前だと首を振り、体を起こした。
久し振りの情交を思い出して、イルカは頬を染めた。真っ白になった、あれがイクという初めての体験。
カカシが自分に靡かないからと興味を持たれ、処女だからと征服され、いいように作られる体。いつか飽きられる事は確かだから覚悟を決めて離れたのに、今日何故自分を。
最近カカシと会っているだろうと近い仲間達が聞いて来た。深入りしても無駄だとの忠告は、一回こっきりの関係で終わった為の嫉妬だとは知っている。
イルカも馬鹿では無いから、言い寄られたけれど断ったと平素と変わらぬ態度を貫いた。
元の教え子達の事があるからと、うちはと九尾を盾にすれば機密事項に関われない彼女らは、それ以上聞きはしなかった。

のろのろと脱がされた着物を身に付けて布団を畳もうとしたら、枕元に有名な意匠の下げ札の付いた真っ青な髪紐が置いてあった。
イルカは其れを手に取ると見詰め、ぎゅっと握り締めた。
カカシが通い続けた自分の部屋、鏡台に髪紐が何本も置かれている理由を聞かれた事がある。教師としてお洒落が出来ないからせめてこの位と思う内に集まったと説明した。
化粧する奴も居るでしょ、と言われてイルカは実技も受け持っているので無理です、と答えたのだ。
連れ込み宿の代変わりに買ってやるよと言われて悔しくて泣いたが、本当に買ってくれるとは思わなかったから、今度は嬉しくて泣いた。
カカシの意図が判らない。突き放し引き寄せ、イルカを翻弄する。

パタパタと小走りに同僚が帰って来た。おや、とイルカの手の髪紐を見たのでお客さんから頂いたのと誤魔化した。
着物をくれれば良かったのにねと気にしない様子に、イルカはほっとして本当にね、と笑った。
運ばれた夕飯を食べながら、同僚はたまたま休暇中の知り合いと遊んでいたと話した。
この町にカカシが居たらしいと興奮する。会えてたらお相手したのにねえ、折角廓に居るのにと一人で騒ぐ様子にイルカは苦笑いした。
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