三
一週間、日を置いた。
その間カカシは真面目に部下の修業を見ていた。女達の誘いには気が乗らず、けれどイルカの事を考えると勃起するのはカカシ自身も不思議だった。
「イルカ先生、今日の報告です。」
と夕方カカシは部下達を連れ、受付で紙切れを手渡す。子ども達に内緒で、と下に隠したメモ用紙に気付いたイルカは瞬時に読み取り、此処が不明ですとカカシをカウンター前に呼び寄せた。
「字が下手なもんでねえ、何処ですか。」
と問うカカシにイルカは笑い掛けた。
「あー、いえ問題ありませんでした。大丈夫です。」
とカカシにだけ解る答えを返した。今夜は如何ですか。と書かれてあったのだ。
何故こんな面倒な誘い方なのかといえば、ナルトが付いて来ない為だ。現に今もナルトはラーメンへの誘いを待っていた。
だがお疲れ様でした、と終わってしまい、ナルトは我慢出来ずに自分からイルカを誘った。
「なあなあイルカ先生、今日は一楽に行けんだろ?」
「ごめん、用事が入っちゃったの。後ろに待ってる方がいるからどけてあげてね。」
困ったようにイルカが断るのをカカシは脇で喜んでいた。ナルトの誘いを断っている、それだけで既に手に入れたも同然だ。
でも今日はまだ相談事の振りをしてやろう、と目を細めた。
イルカはあの後授業の合間に予約したのだと、カカシを大きな居酒屋に連れて行った。二階には、厚い壁に仕切られた幾部屋もの個室があった。
「此処なら私でも個室の二人分払えます。お顔を気にしなくてすみますよ。」
頬を染めて隅っこに座るイルカは嬉しそうだ。座卓がないのは変ですね、と言ったが間もなく脚付きの膳が二つ運ばれてきて喜んだ。
「趣があって凄く素敵です。」
それはひと通りの料理が並べられていて、最後に呼ぶまでは誰も来ない事を示していた。
座卓がないのは狭い部屋でヤル為の、連れ込みの基本だ。だが、カカシにはイルカが知っているとは思えなかった。
食事と共に出された酒は飲み易く、イルカに勧めると銚子を一本空けてしまった。子ども達の話で楽しそうなイルカは、暑いとベストを脱ぎハイネックの襟元を引っ張った。たくし上げた袖から見える腕が思いの外白く、カカシは全て剥いてしまいたいと目をぎらつかせた。
「ねえイルカ先生、知ってましたか。座卓がないのは何故なのか。」
低く囁かれるようなカカシの言葉にきょとんとし、イルカは潤んだ目で部屋を見回した。
解りません、と首を傾げてカカシを見詰める。
「こういう事なんですよ。」
膳を素早く壁に寄せ部屋の中央を空けると、カカシはイルカを押し倒した。両手首を掴み腰の両脇に膝を着いて固定すると、イルカは突然の事に抵抗出来ずされるままだった。
吸い寄せられるように唇を合わせた。そのまま頬から首筋へ唇を動かす。イルカの匂いを嗅ぎながら、カカシの動きが止まった。
オレは何をしている。
女を正面から抱こうと思った事などない。唇に毒が仕掛けてあるかもしれないのに、首を刺されるかもしれないのに、すっかり忘れていた。
初めて女を知ったのは十代半ばだったか。その遊女に教えてもらった時以来だ。
あぁ、と耳元でイルカの微かな声が聞こえ、カカシは我に還った。
「貴女、男を知らないでしょ。」
怯えて力の入らないイルカを起こすと腕に抱き、半間の押し入れを開けると座布団だけではなく、如何にもそれらしい薄汚れた布団が見えた。カカシが引きずり出してみると、すえた臭いと洗っても落ちない血液の染みが使えばいいと自己主張していた。
やはりイルカは知らずに個室を頼んだらしく、声も出ない程驚いている。普段使う気安い居酒屋なのだろうが、廃業した郭を中だけ改装したのだとカカシにはひと目で判ったのに。
「そういう部屋なんですよ。…オレに抱かれる気はありますか。」
今日言うつもりはなかった。それにもう少しカッコ付けたかったし。
イルカに関して制御出来ない自分が可笑しい、とカカシは焦り始めた。
だがまだ優位だ、オレの思うがままだ。
「カカシ…先生には、女の人が沢山いて、…私なんか、」
と震える言葉は拒否ではないが、女の噂はイルカの耳にも届いていたようだ。興味がないから知らないだろうと思っていたが、受付にいれば否応なしに知るらしい。
「オレが、」
誘った事はない、と言った所で今更だ。
すみません、とイルカを抱く腕を緩めるとカカシに向き合い頭を自分の胸に押し付けて、髪を撫で始めた。生徒にやるように。
だが、布の下のふくよかな乳房はカカシの雄を刺激した。
そろりとカカシは顔を上げ、イルカの目を見た。絡み付く視線。
我慢出来ずに唇に吸い付く。遥か昔に遊女に教えられた口付けはそれだけでイケたのだが、記憶はあやふやだ。
一週間、日を置いた。
その間カカシは真面目に部下の修業を見ていた。女達の誘いには気が乗らず、けれどイルカの事を考えると勃起するのはカカシ自身も不思議だった。
「イルカ先生、今日の報告です。」
と夕方カカシは部下達を連れ、受付で紙切れを手渡す。子ども達に内緒で、と下に隠したメモ用紙に気付いたイルカは瞬時に読み取り、此処が不明ですとカカシをカウンター前に呼び寄せた。
「字が下手なもんでねえ、何処ですか。」
と問うカカシにイルカは笑い掛けた。
「あー、いえ問題ありませんでした。大丈夫です。」
とカカシにだけ解る答えを返した。今夜は如何ですか。と書かれてあったのだ。
何故こんな面倒な誘い方なのかといえば、ナルトが付いて来ない為だ。現に今もナルトはラーメンへの誘いを待っていた。
だがお疲れ様でした、と終わってしまい、ナルトは我慢出来ずに自分からイルカを誘った。
「なあなあイルカ先生、今日は一楽に行けんだろ?」
「ごめん、用事が入っちゃったの。後ろに待ってる方がいるからどけてあげてね。」
困ったようにイルカが断るのをカカシは脇で喜んでいた。ナルトの誘いを断っている、それだけで既に手に入れたも同然だ。
でも今日はまだ相談事の振りをしてやろう、と目を細めた。
イルカはあの後授業の合間に予約したのだと、カカシを大きな居酒屋に連れて行った。二階には、厚い壁に仕切られた幾部屋もの個室があった。
「此処なら私でも個室の二人分払えます。お顔を気にしなくてすみますよ。」
頬を染めて隅っこに座るイルカは嬉しそうだ。座卓がないのは変ですね、と言ったが間もなく脚付きの膳が二つ運ばれてきて喜んだ。
「趣があって凄く素敵です。」
それはひと通りの料理が並べられていて、最後に呼ぶまでは誰も来ない事を示していた。
座卓がないのは狭い部屋でヤル為の、連れ込みの基本だ。だが、カカシにはイルカが知っているとは思えなかった。
食事と共に出された酒は飲み易く、イルカに勧めると銚子を一本空けてしまった。子ども達の話で楽しそうなイルカは、暑いとベストを脱ぎハイネックの襟元を引っ張った。たくし上げた袖から見える腕が思いの外白く、カカシは全て剥いてしまいたいと目をぎらつかせた。
「ねえイルカ先生、知ってましたか。座卓がないのは何故なのか。」
低く囁かれるようなカカシの言葉にきょとんとし、イルカは潤んだ目で部屋を見回した。
解りません、と首を傾げてカカシを見詰める。
「こういう事なんですよ。」
膳を素早く壁に寄せ部屋の中央を空けると、カカシはイルカを押し倒した。両手首を掴み腰の両脇に膝を着いて固定すると、イルカは突然の事に抵抗出来ずされるままだった。
吸い寄せられるように唇を合わせた。そのまま頬から首筋へ唇を動かす。イルカの匂いを嗅ぎながら、カカシの動きが止まった。
オレは何をしている。
女を正面から抱こうと思った事などない。唇に毒が仕掛けてあるかもしれないのに、首を刺されるかもしれないのに、すっかり忘れていた。
初めて女を知ったのは十代半ばだったか。その遊女に教えてもらった時以来だ。
あぁ、と耳元でイルカの微かな声が聞こえ、カカシは我に還った。
「貴女、男を知らないでしょ。」
怯えて力の入らないイルカを起こすと腕に抱き、半間の押し入れを開けると座布団だけではなく、如何にもそれらしい薄汚れた布団が見えた。カカシが引きずり出してみると、すえた臭いと洗っても落ちない血液の染みが使えばいいと自己主張していた。
やはりイルカは知らずに個室を頼んだらしく、声も出ない程驚いている。普段使う気安い居酒屋なのだろうが、廃業した郭を中だけ改装したのだとカカシにはひと目で判ったのに。
「そういう部屋なんですよ。…オレに抱かれる気はありますか。」
今日言うつもりはなかった。それにもう少しカッコ付けたかったし。
イルカに関して制御出来ない自分が可笑しい、とカカシは焦り始めた。
だがまだ優位だ、オレの思うがままだ。
「カカシ…先生には、女の人が沢山いて、…私なんか、」
と震える言葉は拒否ではないが、女の噂はイルカの耳にも届いていたようだ。興味がないから知らないだろうと思っていたが、受付にいれば否応なしに知るらしい。
「オレが、」
誘った事はない、と言った所で今更だ。
すみません、とイルカを抱く腕を緩めるとカカシに向き合い頭を自分の胸に押し付けて、髪を撫で始めた。生徒にやるように。
だが、布の下のふくよかな乳房はカカシの雄を刺激した。
そろりとカカシは顔を上げ、イルカの目を見た。絡み付く視線。
我慢出来ずに唇に吸い付く。遥か昔に遊女に教えられた口付けはそれだけでイケたのだが、記憶はあやふやだ。
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