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元日、朝はとうに過ぎた時間に、サクラはイルカの部屋のドアを叩いた。また寝落ちしたのだろうと掛ける声は強くなる。日の出が見たいとナルトが言い二人は付き合うが、ナルトとサスケは明け方には眠ってしまい、イルカが追って眠るパターンだと想像に易い。
果たしてごめんねー、とイルカが息を乱して玄関に現れた。
新年の挨拶をしてイルカがサクラの真っ白なコートを褒めると、その下の薄いピンクのワンピースも新調したのだと見せてくれた。
「サクラは色白だし、女の子らしくてよく似合うわね。」
今だけの美しさがあるのに無理して大人ぶらないで。でもちょっとだけお化粧許しちゃうから、とサクラを中に入れて、のろのろと身支度を整える男共を待ちながらマニキュアとマスカラを施してやる。そんな些細な優しさが、こどもでもなく大人でもない難しい年頃を簡単に手懐けてしまうのだ。
サスケもナルトも身長が伸びて、今年はコートを買い替えなければと話していた。買い与えるのは簡単だが仮にも給料をもらう身だ、自分で買ってこそ意味があると、先日三人で見立てに行って今日初めて手を通す。
「イルカ先生はまだ着替えないんですか。」
ああごめんね、とイルカは襖を閉めてひと部屋に籠った。うちのお母さんも自分の支度は最後だったから、主婦って大変ですね。とサクラはその向こうのイルカに話し掛ける。主婦ねえ、と嬉しそうな声は何を想像したのかとサクラは微笑んだ。
お待たせ、と出てきたイルカは青系グラデーションのカシミアの膝丈ワンピースに、手には銀の毛皮のあしらわれたごく薄い灰色のバックスキンのロングコートを下げていた。
脚を出すのは宴会の余興位だから恥ずかしい、と顔を染めたイルカは、サクラの目からも美しかった。普段は後ろにいても気付かれない程気配は薄く地味なのだが、知る人はイルカを美人だと褒め称える。受付で笑ったら下忍が卒倒したという逸話まであるのだ。
イルカ本人はよく解らないけど揉め事の際には便利みたい、と使いどころを心得ていた。今は主にカカシに向けて。
「カカシさんが全部買ってきてくれたの。」
下着まで、と聞いてサクラはナルトとサスケが聞いてなくて良かったと玄関を振り返った。二人は警戒任務帰りのカカシの応対をしていた。
カカシは当たり前のように、ただいまぁとイルカに頬を擦り寄せてシャワーを浴びに行く。いつの間に住みついた、と突っ込みたい。
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