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最速新記録で里に戻ったカカシは、イルカに会うためのチャクラはちゃっかり温存してあり、報告に数秒掛けただけで一分後にはイルカを探し当てた。
職員室で、年末だからと書類の整理をしていた。日直以外の教師もほぼ全員揃い、要る要らないと、今年最後のゴミ回収に出すための仕分けに忙しい。
「あ、カカシさん。」
一番に気付いてくれて嬉しいと、カカシはいそいそとイルカの側に寄った。それに気付いた教師達はざわめき、二人に注目する。
カカシがぺこりと頭を下げ、お世話になりますと言ったものだから、ざわめきはどよめきに変わった。
「どどど、どういうこ、事で、」
よく聞いてくれた主任、と皆が思った。
こういう事で、とカカシはイルカを後ろから抱き込んで頬を擦り寄せた。イルカはくすぐったいと言いながら、嬉しそうに為すがままになって。
あーそういう事ですねー、と全員が黙って頷いた。
カカシさん、部下を見に行かないと今日はうちに入れませんよ。と聞こえた艶やかな囁き声に、我慢できずに膝を折った者が出た。
甘い、甘すぎる。
拷問のような甘い空気は独り者を直撃し、撃沈させた。そして職員室は屍だらけとなり、早々に閉鎖された。

けれどイルカの部屋で夕飯を食べる二人は、まだ昨夜から触れ合いは進んでいない。そう、唇すら合わせていないのだ。
何故か。唇を求めれば、そのまま行き着く所まで行ってしまうから。まだ今は大丈夫だし、と寄り添う事の楽しさに満足していた、案外真面目な恋人達。

ただカカシはイルカは自分のものだ、と暇さえあればイルカに付いて歩いた。手を出すなと牙をむく犬のように、尻尾を振って忠誠を誓う犬のように、そして年内には二人の関係を知らない者はいなくなった。カカシが長期任務で里にいない者達にもわざわざ知らせた、と聞いた時には三代目とイルカはいっそ頭を打って記憶喪失になればいいのに、と力なく笑ったのだった。

大晦日、受付に依頼は朝から一件もなく、報告を数件受けて明るい内に閉めた。イルカは自宅で待つナルトとサスケが喧嘩していないか、少し心配で急いで帰宅した。
二人は買い出しに行った後に、疲れたのか昼寝をしていた。作れなかったおせちを出来合いのが残っていたら、と無理を頼んだから商店街を回ってくれたのだろう。ちゃぶ台の上には、串物やきんとんなど全てが小売りの袋に入っていた。イルカには、二人の成長が嬉しかった。
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