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卒業
せめて、春までアカデミーにいさせてもらえないかしらねぇ。
イルカは食卓に肘を付いて、目の前の息子を見ていた。
卒業してしまうといくら幼くても、下忍として任務につかなければならない。半年あればもう少し成長するし、その間に実戦を指導してもらう上忍師候補も探せるし、と思っていたのだ。
組み合わせの基本は上忍一人に下忍三人で、年齢や実力もある程度揃えた方が良いとされているから、イルカの子があまりにも幼過ぎて引き受け手がいないのは当然だった。
こんな生意気なちび、預かってくれる人なんかいないよねえ、と知らず声に出ていたらしい。お母さん、それはないんじゃないか、とおかずをくわえた子どもに言われた。
仕方ないじゃん、くそ親父に似ちゃったんだから。と口にご飯を掻き込みながらふて腐れたように呟くが、その表情は照れ隠しに見えた。
イルカより聞かされている、父親の優しさ素晴らしさ。周囲より聞かされている、父親の多くの称賛と少しの嫉妬。全てを理解するにはまだ早かったが、最近は父を誇りに思うようになっていた。
背に負うものは二人には重すぎたが、火影や教師達が支えてくれた。頑張る姿に応援も増えた。そうしてこれまで何とかやってこれたが、息子の将来を考えるとイルカは不安でならない。ただ一つの救いは、カカシが無事でいる事だった。毎晩一日の終わりに鶴を折りながら、今日もありがとう、明日も無事でいますように、と祈り続けていた。
どうしようカカシさん、と独り言が増えた。上忍師が見付からない事もあり、イルカの希望通り卒業は春に延ばされたが、それはその場凌ぎにしかすぎなかったから。
進展もなく年が明けて、灰色の空も柔らかな陽射しに変わり始めた頃、イルカ親子は火影に呼び出された。
火影は窓の外を眺めながら話をどう切り出そうか悩んでいたが、大きく息を吸ってイルカに向き直った。
「イルカ、カカシが帰って来るぞ。」
何だそれ、と子どもは目を剥いてイルカを見上げた。父親が暗部に入っているとは聞いたが、生きては抜けられないとも聞かされていたのだ。
突然の帰還の理由はこの子の上忍師になるためだ、と火影は微笑んだ。この何年かの間に誰にも文句を言わせない、それだけの働きをしたのだという。息子の上忍師が見付からないとカカシに話すと、絶対自分がやるんだと言い張ってきかなかったらしい。前例のない事だったが、確かにそれ以上の適任者はいないだろうと火影の後押しで承認されたのである。
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