6

親子
「いや、だからイルカも一緒じゃよ。」
「おい爺、嘘つくとこの部屋ごと吹っ飛ばすぞ。」
たかが三才の子どもに悪態つかれても嬉しそうな火影は、その証拠にとイルカの教員免許証を見せてやった。
子育ての三年間、後半は将来を考えた施設長の勧めでイルカは中忍昇格のために施設外での任務にもつき、見事昇格しその後教員免許証も手にしたのだった。しかし知識と技の実力は文句なしだがイルカは中忍としての実績がないため、今すぐ正式採用にはならない。二年程講師と中忍任務を兼任し、二十歳になったら正式採用だと説明すると、イルカは深々とお辞儀をしご配慮ありがとうございます、と傍らの子の頭を押さえて一緒にお辞儀をさせた。
何でだよ、お母さんの実力なんだからお礼はいらないじゃん、とまだ悪態をつく子にイルカは笑って説明した。イルカが将来は教師になりたいと打ち明けると、皆が後押ししてくれた事。施設には十八才までしかいられないから、もうすぐ誕生日を迎えるイルカのために教員用アパートに親子で移れるようにしてくれた事。
そうか、とこうべを垂れた子は火影にありがとうございます、と力いっぱいお辞儀をした。
そうして二人は教員用アパートの、自分達だけの住まいに移って新生活を始めた。教師には苦労人が多く、前戦を退いた上忍が改めて教員免許を取ったり何度も上忍昇格試験に失敗した妻帯者がいたり、と誰もイルカ親子を偏見で見ない事が嬉しかった。
それでも生徒の親や近所には、否定的な人々はいるもので。イルカは息子とはアカデミーでは顔を合わせないように、親子だから優遇されていると言われないように、細心の注意を払ってもらった。
もっとも半年もすれば、やはりカカシの子だと一目おかれる存在になり、実力もイルカを追い越してしまった。しかし父親不在のまま名前が先行し、そっくりだと言われる度に子どもは鏡の前で自分の顔を睨んでいた。
秋の昼下がり、風を入れるために窓を開けておいたら千羽鶴の大きな束が一つ、居間の天井からぶら下がって揺れている。壁際には百の束が何本か下げてあり、それも合わせて数えてみれば四年はとうに過ぎていた。
「ここに引っ越して、もう一年半になったのね。夢中だったから、そんなにたったなんて気が付かなかった。」
一年分が印刷された暦を見ながら、イルカは呟いた。来春には教員として正式採用が決定した。子どもも特例として試しに受けた下忍認定試験で合格してしまい、卒業を迫られている。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。