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契り
深夜、カカシはイルカの部屋の前で躊躇していた。任務が長引いて真夜中になってしまったがひと目だけでもイルカに会いたいと、勢いだけで来てしまった。だがまだ体調のすぐれないイルカを、起こすわけにもいかないと思い直して帰ろうときびすを返した。
「カカシさん、待って。」
カチャリと扉が開いた。カカシは勢いよく腕を引かれ、部屋の中のベッドの上に転がる形になった。
扉が閉まると、部屋は壁の常夜灯の蜜柑色に薄暗く染まっていた。イルカは扉の前に立ちカカシに行かないで、と聞こえない程小さな、けれど切羽詰まった声で言う。
落ち着いて、とベッドに並んで話を聞けば、イルカを災害孤児の施設に入れようという話があるらしい。しかしイルカは下忍の任務として三代目の世話し、代わりに保護を受けている筈ではないか。
カカシの疑問にイルカは俯いて答える。火影の現役復帰で状況が変わったのだと。
「しょうがないのよ。」
と自分を納得させるように言い、イルカは顔を上げて潤んだ目をカカシに向けた。
口では諦めているけれど助けて、どうしたらいいの、と純粋な黒い目は訴えている。
いくら上忍と言えどまだこどものカカシには何もできる事はないのだが、何とかしてやりたいと思う。握る手は震え爪は肉に食い込み、微かな血の臭いさえし始めた。
そんなに貴方を苦しめるつもりはないの、とイルカはカカシを抱き締めた。甘い香りの柔らかな体がカカシを包み、かあっと血が逆流するのを感じるとカカシはイルカをベッドに押し倒していた。
潤んだ目が見開かれイルカは驚いていたが、怯える様子はない。覚悟はできていたのだと、いやそのつもりでいたのだとカカシは思った。今日自分が暗部に配属が決定した事は聞いただろう。いきなりの配属とイルカの施設行きは二人を引き離すためだったのだと納得がいく。
逆らえない、そしてもしかしたら二度と会えない。暗部に入るという事は、存在を抹消され安否すら教えてもらえない。死んでようやく解放されるのだとさえ言われているのだ。
イルカは横になったままカカシの髪を優しく撫で付け、左目の傷に指を這わせた。全てを覚えていたいの、と穏やかに言われてカカシは欲情を押さえるのをやめた。
まだ幼い二人には初めての行為。相手のために優しく懸命に愛を表現しようと思うが衝動は止められず、貪るように求め合う。イルカの体のあちこちに赤い花びらが散り、その度毎に硬いが艶のある高い声が上がった。荒い息と。
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