誓い
貴方が好きです、命をかけるほど。
君が好きだ、命を捨てるほど。

うみのイルカはまだ下忍になったばかりで両親を一度に失った。だがそんな境遇のこどもはたくさんいたから、三代目火影に面倒を見てもらえる事になったのは贅沢過ぎるのだと言える。
忍びとして父母と同様に三代目に仕える代わりに衣食住を保証する、という名目でイルカは私邸の片隅においてもらっていた。
両親との幸せだった日々を思い出し毎日泣いていたが、ナルトという赤ん坊は自分よりも壮絶な人生になるのだと聞かされ、泣いてばかりではいられないと前向きに生きる決意をした。しかしイルカの不眠と食欲不振は続き体調は最悪で、邸内での任務もろくに果たせない日々だった。
その日もナルトをあやしていたが、イルカの不安定な心を読み取ったナルトはぐずり続けていた。泣き止まないのは自分のせいだと解っていたが、どうしようもない。あやしながらイルカも泣けてきた。涙は拭いても拭いても零れてくる。
「その子を貸して。」
少年の声に驚いたイルカは肩を大きく震わせ、腕からナルトを落としてしまった。イルカの膝の上でナルトは顔を真っ赤にして、更に大声で泣き出した。
悪かった、とイルカより幾つか年上と見られる少年は頭を下げ、ナルトをそっと抱き上げた。
よしよしと軽く揺さぶると赤ん坊は少しずつ落ち着き、やがて眠そうに小さな欠伸をした。
「君のせいじゃないよ。周りが落ち着かないからだよ、これだけ色んな気が飛び交っていれば仕方ない。」
イルカに優しく声をかける少年をよく見れば、陽に透けて輝く白い髪と鼻から下を覆う布、額宛てを斜めに左目を隠す見るからに怪しげな風体だ。
「ありがとう、でも私がしっかりしていれば泣かせないで済むのに。」
何となく警戒して腰を浮かせてしまう。そんな人ではない、と思いながらも忍びとして反応する自分をイルカは笑いたかった。
―この人、気配がなかった。
自分は決して鈍感な方ではないと思っていたから、落ち着いてみればいきなり現れた少年は、やっぱり怪しい。
睨むイルカに気付くと眠ったナルトを渡して、少年は頭を掻きながら名乗った。
はたけカカシ、上忍、四代目がかつての上忍師で親代わり、とそれだけ解れば充分だった。イルカには本人以外は興味がないことだった。

この時二人は一瞬にして、お互いを魂の片割れだと理解したのだ。一生を捧げる相手に出会ったと。
早すぎる、しかし止められない愛は加速する。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。