11

駄々
ミナミとホナミは、カカシが連れ帰る事にした。
来た時のように背中に張り付かせようと思ったが、かわいそうだとカカシはよく眠れるように両腕に抱き、優しい笑みを子らに向ける。
母猫をサクラが、子猫をナルトとサスケで三匹ずつ腕に抱いて帰った。
依頼人の元へ届ければそれはもう喜ばれ、しかしでは解散、という時に目が覚めた二人が猫が猫がと泣いた為、依頼人の元へ戻ったのは予想外だった。初めての我が儘。
留守がちのうちじゃ飼えないんだ、とカカシが困っていると老夫婦が、いつでもいらっしゃいと、孫が増えて嬉しいと言ってくれた。
昼食までご馳走になり、満足した赤ん坊達はまたね、と人好きのする笑顔で猫達に挨拶をした。
そしてイルカが帰還するまで、数日おきの訪問はカカシの役目と為る。交代して老夫婦に会ったイルカが、かつての教え子の祖父母だと知って親交を深めたのは、言うまでもない。
老夫婦の家から帰宅して、こども達はまた直ぐ寝てしまった。その寝顔に父は嬉しそうに呟く。
「お前達も普通のこどもらしくて、パパはほっとしたよ。」
忍びとして早熟過ぎたカカシにはこども時代などなかったも同然だったが、今はイルカに出会ってその時間を取り戻した。この子達はずっと人間らしくあって欲しいから、もっと感情を出してくれ、と思うのだ。
二人を目を細めて愛おしそうに見ていると、ママ、と小さな寝言が聞こえた。
親がこんな稼業じゃかわいそうだと、よく仲間達が言ってた。だけど、皆よく育て上げてたよな。オレも頑張んなきゃ、とカカシは寝返りを打ってずれた掛け布団を直してやりながら、一緒に横になって目をつぶった。
夜ごと、イルカから連絡の烏が飛んで来た。その辺でうろついていたのを仕込まれて、とイルカの発った夜に初めて遣わされたその烏は口を開いたのだ。
いやまさか、と父と子達は、豪快なイルカの性格を改めて思い知ったのだ。そして、天使ってもしかしたら悪魔と同義語なんですかね、と溜め息を付く烏の愚痴を聞く毎日と為ったのである。
依頼された任務は順調だという。予定通り二週間で帰れそうだと伝えられたが、烏は一週間で精根尽きた様子に見えた。小間使いのような仕事もさせられて、ろくに休めないのだ。
「あの人、仕事には厳しくてね。出産してから一段と凄みが出たんだ。お前もかわいそうに。」
と肩を震わせて笑いを堪えるカカシは、残飯で悪いが、と酒のつまみを出してやった。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。