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探索
聡い所はイルカ譲り。我が儘も言わず人に遠慮して。
赤ん坊らしくないよなあ、とカカシは扱いに困り、ついつい甘やかしてしまうのだ。そんなカカシの心も読んだように、二人はいつも最小限のおねだりだけ。
今日は何でもしてあげる。背中の二人に言うと、いっぱいあそんで、とはしゃいで笑って。
林に入ってカカシは思い出した。此処はアカデミーのトラップ練習場だ。低学年用だから、部下達には苦もなく歩けるだろう。
だが、猫の親子にはどうだろう。動物の勘にも限度があるから―とカカシは最悪の状況を想像すると、咄嗟に部下達に命令した。
「散れ、此処が何処だか解るよな。」
「覚えてる。」
まずサスケが跳んだ。
「爆発する物は仕掛けませんが。」
言い淀みながら、サクラが別の方向へ跳んだ。
「デモ用の先生達のは、どうだか判らないってば。」
また別方向へナルトも跳ぶ。
そうか、教師が生徒に見せる為に仕掛けたトラップは多少危険かもしれない。カカシは忍犬を呼び出そうとして、逆効果になると印を結ぶ手を止めた。どうしようか。
「パパ、にゃあにゃたち。」
ミナミが遠慮がちに声を掛ける。振り返ると、あのね、とまた小さく。
「おうち、ほしいの。」
そうだ、子猫の為に何処かに隠れている可能性が高い。カカシはミナミの頬に自分の頬を寄せてありがとう、と微笑んだ。流石イルカの子、冷静な判断だ。
カカシは首元のインカムで三人に指示を飛ばし、自分はまだ誰も向かっていない方向へ跳んだ。
やがてサスケが、見付けたと珍しく興奮気味に連絡を寄越した。親子共々元気だと。
サスケの元へ駆け寄れば、目も開かない子猫が何と六匹。
おかーさん、あんた凄いね、此処までよく連れて来たね。と、皆思ったとか。
合計七匹、別々に連れ帰るのは親の威嚇により断念した。そりゃ、離されたらやだよね、と溜め息付いたカカシは悩む。
「うっちー、おんぶ。」
ホナミがサスケに両手を伸ばした。サスケと発音するのはまだ難しいから、゛うちは″のうっちー、という訳だ。
「ナルもおんぶ。」
ミナミはナルトに手を伸ばす。どうして、とサクラが膝を着いて二人に目を合わせた。
「パパ、にゃあにゃつれてくの、ね。」
ホナミが笑う。
サスケは黙って腰のポーチから救急用の包帯を取り出し、さっさとホナミを背中におぶってぐるぐる巻きにした。慌ててナルトもそれに倣う。
カンクロウみたい。とサクラは思った。
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