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任務
では行って来ます、とイルカは門の前で、見送りのカカシに礼をした。
父の腕に抱えられたミナミとホナミが、少しだけ泣きそうな笑顔で、いってらっしゃいと小さな手を母に振る。行かないで、という言葉を言わないように我慢し、きつくしがみついた二人の手は、カカシの服に皺を作る。
「ママ、がんばる。」
やっと言えたホナミの言葉は、イルカの胸を締め付けた。
数日前、まだまだ理解出来ないだろうと思いながらも任務について説明すると、それぞれ役割があるのだとだけは自分達の中で消化出来たようで、二人はその後黙って散らかした部屋を片付けたのだった。
別れを惜しむイルカの後方に、困ったような仲間達が立っていた。二週間、共に任務に就くアカデミーの同僚二人だ。
イルカは表立って諜報は出来ない立場にある。それに可愛いこども達がいるから、危険に為るかも知れない事はさせられない、と仲間達が時間割を組み直して迄同行者を増やしてくれた。
女性三人なら大丈夫だと、カカシも納得したし。ただ、最強のスリーマンセルがいないとアカデミーの警備が大変な事に為るんだと、送り出す者達は半分笑えなかったのは真実らしい。
別れの儀式が終わり、買い物に行くように、三人は軽やかに出立した。長い見送りは余計に辛くなるからと、父と子らもさっさと帰宅するが、何もする気になれずに居間に転がった。が、しばし呆けていた子どもらが二人同時に跳び起き、カカシにがしっとしがみつく。
「パパ、にんむだよ。」
「ナルきちゃうってば。」
揺すられ叩かれ、漸く起き上がったカカシの情けなさは、息子と娘の目にも見事だ。これではいけないと、おむつの取れないこども達の方が躍起になり忍犬を呼び出して、無理矢理引き摺るように家からカカシを追い出した。
最近では犬達の主人はイルカであり、ミナミとホナミは命に代えても護る存在とされている。カカシはすっかり忘れ去られたかのようだ。
玄関先で頬杖を付き、ついでに溜め息も付き、カカシはイルカの留守を嘆いた。でも、あんなに生き生きしてるイルカは久し振りだったかな。
「あーカカシ先生、ぐずぐずするなってばよ。」
遥か彼方からナルトの大声が聞こえる。下忍の部下達が走って迎えに来たが、カカシの前で立ち止まって何かを探すように辺りを見回した。
「先生、二人は何処ですか。」
サクラが不思議そうに尋ねる。
「置いて行くなんて、馬鹿な事しないだろうな。」
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