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言葉
「アタシが必要とされているんです。危険はないし、ただ学校のシステムを、より良いものに変える為に指導するだけですから。」
半分は本当。だが半分は極秘の諜報、二重の任務。敵に忍びの育て方を教えに行くのか、との意見も出たので、ならばレベルも確認しましょうかと、売り言葉に買い言葉はイルカらしい。
いくら同盟国であちらが隷属的立場にあろうとも、今後何が起こるかは予測がつかない。母であるイルカならばあちらも油断するだろうと、上はそれを承認したのだ。しかし真実は、カカシには決して言えない事で。
で、この子達なんですが、とイルカが二人を連れて行けないと言う前に、カカシが
「うん、大丈夫だよ。頑張って三人で留守番するから。」
と背中によじ登って来るミナミとホナミを交互に振り向き、ねーいい子でいられるよねー、と語り掛ける。パァパ、ねぇ、とミナミが首を傾げてうなづくように返事をした。それにつられてねぇ、とホナミも首を傾げた。
結局パパ、ママ、と呼ばせている。誰が教えたかは判らないが、パパと初めて呼ばれた時には、双子とカカシは上忍待機所にいた。年度半ばで任せてしまった副担任に申し訳ないと、イルカは半月に一度アドバイスに来ていたのだ。そんな時は、当然のようにカカシが子守をする。
たまたまその日は放課後に生徒に捕まって、離してもらえなかった。
「イルカ、遅いねえ。」
とカカシの独り言に、ホナミがうん、おちょいねえ、と返す。パァパ、マァマはまだあ、とミナミがカカシの袖を引いて。
「まだだね。……え?」
なんだって? と固まる。
ぐるりと周りを見回して、なぁおい、今。カカシが口篭る。
「はっはっは、実はお前を驚かせようと、ずっと練習してたんだぞ。こいつら、もう皆と会話出来るんだ、なあ。」
とガイに同意を求められて、二人はうん、と力強くうなづいた。
だってまだ、片言しか話せなかったはずなのに。カカシはまだ動けない。
「パァパ、ぼくえらい?」
「パァパ、ホナミもミナミも、いっぱい、れんしゅ、したよ。」
うっそー、と呟いた後カカシは腰を抜かして床に座り込む。ビンゴブックにも載るあのカカシがただの父親になった姿は、秘密にしておいた方がいいだろうか、今更か。
「おるしゅばん、がんばろね。」
「いいこ、しゅるの。なかにゃ、にゃかな、あれ…。」
「ホナミ、なかない、でしょ。」
可愛すぎ、と紅が胸の前で手を組んだ。
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