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依頼
火影の部屋で、ミナミが床をはいつくばりゴミでも何でも口に運ぶ。イヅモがそれを奪い取り、ミナミがその手に噛み付く。
ホナミが机の上で書類を引き裂き遊ぼうとするのをコテツが奪い取り、こちらも手に噛み付かれる。大人達の叫び声に子ども達の甲高い笑い声が交じり、五月蝿いったらない、と笑いながら火影は負けじと声を張り上げた。
「ではそろそろいいんだな。行ってくれると、非常にありがたい。」
肩で息をしながら、向かいのイルカに依頼用紙を見せる。お受けいたします、と両手に受け取り判を押したそれは、他国への出張命令だった。
イルカの出産前に依頼されていた、いわく『うちの国の忍者養成学校に近隣随一の木ノ葉の里から講師を派遣して、教師の実習教育と、効率的なシステムの再検討をして欲しい』というもの。別に機密などのやり取りはなく、指導のコツを教えれば良いだけなので引き受けた訳だ。
職員全員の推薦でイルカに決定はしたが、最低二週間の期間が必要だった為、妊娠中のイルカを派遣する訳にはいかない。それ以前にカカシの写輪眼が発動しそうだと思って、今迄延ばしてもらっていたのだ。
双子も生後半年、やはり蛙の子は蛙かと。火影の笠に、二人同時に飛び付いた。不意を即かれた一瞬の後、笠は部屋を飛んでいた。面白いように、横に回転しながら端から端へ。確かにお前らのこどもだ、と火影は遊ぶ二人を嬉しそうに眺めるだけだった。
この子達は置いて行きませんよね、とイズモとコテツは泣きそうな顔で聞いて来る。えーどうしよう、と虐めるとお願いしますから、と手を合わせる。
カカシさんが見てくれる筈です。とイルカは根拠もないが、断定した。火影様が見てくださっても良いのですが、と言えばさて書類の決算だ、と逃げる。
「二週間、カカシには高位の任務はやらんから。」
と、子守はカカシに決定された。連れて行きたいとは思うが正式任務だし、きっとカカシの方がこどもらと離れたがらないだろう。いや、その前に。
案の定。
「何で、イルカが行かなきゃいけないんだよ。」
イルカは、依頼書を突き付けられてそれを燃やそうとしたカカシの頭を叩く。
「アタシは復帰するんです。」
「いきなりこれはないでしょうが。」
カカシは食卓の椅子で膝を抱えて、こどものようにいじけた。背中を丸め、膝の間に顔を埋める。
イルカは後ろからいい子だと言うようにカカシを抱くと、ゆっくり言い聞かせた。
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