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育児
ただいま、とカカシが上忍師としての簡単な任務を終えて、農家から野菜を沢山貰って早くに帰宅した。
マツバはしいっと指を立てて、眠る親子を起こさないように、カカシを台所の食卓へ座らせる。
いくらカカシがうとくとも、イルカの顔色には気付いているだろうと思っていたが、聞けば全く判らなかったと。
マツバはカカシにお茶を入れてもらい、その手際の良さに協力していない訳ではないと知るが、敢えて言わせてもらう。
「彼女、夜は寝てないんでしょ。昼間一緒に寝てるとか言って。」
「はい、オレには寝るように言ってくれますが、イルカは殆ど眠ってないのは知ってます。でも昼寝してるからって言ってるし、特に変わりはないようですし。」
何をしてあげたらいいのか判らないんです、とカカシは溜め息を付きながら野菜を冷蔵と常温に選り分けた。
彼女の事を思うなら、毎晩一時間だけ、時間をあげなさい。とマツバに言われてカカシは首を傾げた。
母親は、二十四時間母親してなきゃならないのよ。あんたら男はそれしないで済むんだから、とマツバが自分の過去を思い出し、腹を立てて八つ当たり気味にカカシに言う。
楽しいだけの育児ではないと、まだまだ解らないカカシは渋々うなづいた。
「具体的に、どうすればいいんですか。」
「だからね、好きな事をする時間をあげて。」
髪の手入れも出来ないし、読みかけの本もそのままだし、でもアタシが少し我慢すればいいだけですから―。と笑ったイルカの言葉を伝えると、カカシは猫背を更に丸めて食卓に撃沈した。ごめんなさいとくぐもった声は、マツバにかイルカにか。
言い過ぎたかとマツバはカカシの肩を叩きしかし、父親としての修業だと思いなさい、と慰めにも為らない言葉を掛けた。あんたなら出来るから。
お互いが思いやれば、いい子に育つ。今でも充分だとは思うけれど、里はきっと将来を既に決めているだろう。これが純粋培養の忍びのこどもの行く末かと、一人生まれる度に嫌になり。けれど幸あれと祈るしかない自分は、特にこの二人には肩入れしてしまう。
産後の定期検診を忘れないで、とマツバがお土産の野菜を引き擦るようにして帰る頃には、イルカもすっきりと起きて来た。
何の話をしてたんですか。内緒よ。
これからの家族計画の事さ、あと何人作ろうか。やだカカシさんの馬鹿。
見詰め合う若夫婦。きっといつまでもこのままなんだろうな、とマツバは微笑んだ。
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