2

訪問
病院で世話になった産科の女医マツバが、非番だからと訪ねてくれた時、ミナミとホナミの泣き声は最高潮だった。
イルカがいくら教師だとはいえ乳児は扱わないから、ましてや双子となれば手は二倍どころか三倍は掛かる事は確実だと、心配に為ったのだ。
案の定、てんてこ舞いしている。けれどイルカは楽天的だった。泣いてる限りは大丈夫、存在の自己主張の表れですよね。
笑って手際良くホナミのおむつを取り替え、水を張ったバケツに汚れ物を放り込んだ。右の乳を含ませ黙らせると、そのまま空いた手でミナミのおむつを換え始める。同じ動作を繰り返し、ホナミが口から乳首を放すと膝に俯せにして背中を軽く叩き、ゲップを出すまで待つ。よし、と転がして左の乳をミナミに含ませて、イルカは漸く落ち着いた。へえ、とマツバは感心した。
「よくやってるわね、凄いじゃない。とても初めての子とは思えないわよ。」
隠し子いるんじゃない。あははは、と顔を見合わせて笑う。産んだ事のない隠し子は沢山いますよ。戦場で生まれた先輩達のこどもは、私が育てましたから。
ナルトに限らずあの子やこの子、と名を挙げれば立派に上忍に成った者もいて、一体あんたは幾つからそんな事をしてたのと、マツバは逆算して驚いた。
火影様に引き取られる前から。ああそうか、お母さんもそうしてきたんだっけ。
イルカが強いのは母譲り、ただし体を使う事のみに。小柄な娘に過剰な心配をして、生きる為に教えたのは主に体術だった。父に似れば忍術でもっと上に昇れただろう、と思ったらしいが、充分会得はしているという周りの見解と、相違がいまだにあるようだ。とにかく、イルカは重宝されているのだ。早く復帰してくれ、と。アカデミーでも現場でも。
だから体を上手くベストに持ってかなきゃなりません、いいリハビリですね。と双子を両手に抱えて揺らしながらあやして寝かせつけるイルカに、マツバは笑った。
「でもね、貴女まともに寝てないでしょ。無理するとお乳が出なくなるし、直ぐに飲む量が足りなくなって粉ミルクを追加しなきゃならなくなるわよ。」
確かに、とイルカは飲まれて少し張りの無くなった乳房を揉んだ。他人の子は、哺乳瓶をくわえさせておけばよかったけど。うーん、と首を捻るその顔は何だか青白い。
少し眠りなさい、とマツバはチャクラを篭めた指先をイルカの額に当てた。え、と声を出した途端、その体は倒れ込んでいった。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。