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…ああ、奥の部屋で布団の上がいいよね。
布団を敷くならどのタイミングだろうかと、カカシは雰囲気を壊さずに進める計算をする。
手を伸ばせば届いた襖を少し開けると暗闇に居間の明かりでベッドが浮かび上がり、良かったとイルカに気付かれないように肩の力を抜いた。
このままベッドの上で脱がせばいいんだな、とカカシはまた頭の中で愛読書のページを捲る。
「じゃあ、いいの?」
カカシの腕の中でイルカは小さく頷いた。
「…カカシさんのものになりたい…。」
ほんのり染まった頬はもう酔いからではなく、イルカの伏せた顔は少し強張った笑みを浮かべていた。
イルカとてさほど経験はなくましてや本当に心を奪われたのはカカシだけなのだ、嫌われたくないと期待よりも不安が先に立つ。
私が誘ったみたい。淫乱でスキモノなんて思われたらどうしよう。でもカカシさんが好きだから、愛してるから抱いて欲しい。
躊躇いを振り払うかのようにイルカはカカシの首に腕を回し、心の内で離さないでと懇願しながら力を籠めた。
カカシにはそれが伝わったのだろう、縋り付かれた事を合図と見てイルカの身体を掬い立ち上がってベッドに向かう。
ゆっくりとその身体を下ろしカカシもベッドに乗り上がった。重みに沈み込んだ布団から微かにお日様の匂いがしたように感じて、まるで暖かなイルカのようだと緊張が和らぎ落ち着き始めた。
次々と装備を外していく。既にそれらを外していたイルカがゆっくり髪をほどきシャツの裾を捲り始めると、カカシの手が添えられ片腕ずつ抜かれていった。
薄暗がりとはいえじっと見詰められイルカが羞恥にブラジャーだけの胸を両腕で隠すと、カカシが背中に手を添え優しく口付けながらその身体を横たえた。
「綺麗だ。」
囁きながらカカシの片手はズボンを剥ぎ取る。居間の暖房が届かず、寒さにひやりとしたイルカは思わず脚を縮めてしまった。
寒いよね、とカカシは慌てて布団を肩まで掛けてやり、傍らに立って素早く下着一枚になるとイルカの隣に滑り込んだ。
思っていたより温かなカカシの素肌と逞しい身体が荒れ狂う夜を予感させる。イルカはほんの少しだけ怖くなったが、カカシのひと言でそれは簡単に払拭された。
「イルカ、愛してる。」
イルカの身体を跨ぎ耳朶を軽く噛みながら、ブラジャーを外してカカシは首から鎖骨へと唇を移動させる。イルカはその唇に全身が溶けるのではないかと思う程の熱を感じて、悦びにああと小さく声を漏らした。
オレのもの、と呟き小さな紅い痕を次々と付けながら、カカシは両手で柔らかな乳房をゆっくり揉みしだく。横になってもお椀型に保たれた胸はカカシの手には少し小さいが、押し戻される弾力が気持ちよくて何度も繰り返し揉んでしまう。
中心の薄桃色の乳首は今はカカシだけが吸い付く事を許されているのだと、悦びについ言葉に出してしまった。
「これもオレのもの。」
舌でぐるりと舐めちゅうと音を立てて吸うと、仰け反ったイルカが踵でシーツを蹴った。
もう一方を揉みながら、空いている手を腹から小さな布切れの中へ滑らせる。繁みがしっとりと濡れ、指先が入り込んだ中は熱く潤んでいた。
自分の局部が熱く張り詰めた瞬間、知らずカカシの指に力が入ってしまい指先が小さなしこりを擦ってイルカが腰を揺らした。
しまった、とカカシは歯を食いしばった。余裕のなさをイルカに気付かれないようにゆっくり肩で息をし手順を思い出すが、文章は想像と妄想を前提とし表現が直接的ではない為に参考にはならなかった。
カカシの手が止まり、動かない事に疑問を持ったイルカが声を掛けた。
「カカシさん?」
どうしよう、挿入までどうしたらいいのか解らない、でもいつまでもこうしている訳にもいかない。
「イルカ先生。」
「はい。」
先生と呼び方が戻った事に疑問を抱いたイルカは、抱く価値のない身体と言われるのではないかと怯え緊張しながらカカシの言葉を待つ。
「実は、」
イルカの身体から手を離し、正座した膝に拳を乗せたカカシは観念して打ち明けた。
「オレ、…女性経験が…ないんです。」
「はい?」
あまりにも想像とかけ離れた言葉を聞いたイルカは、瞬時にはその意味が理解できなかった。
暫しの沈黙の間に脳内で何度も反芻し漸く理解できたが、今度は何と言ったら良いのか返答に困る。
「…その、オレ、まだ…。」
「どう、いえ未経験…なんです、か…。」
ええーっ、嘘だあ! と叫びたいのを抑え、イルカは身体を起こして俯くカカシを見詰めた。
んと。えと。童貞。…。
「オレ、…好きな人でなきゃ嫌だったし、我慢できたし。だからイルカ先生が、その…好きで大好きで、初めて愛してると思えた人で。」
顔は真っ赤、目をしばたたかせ。
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