28

28 月齢二十六
流れる時は家の中では止まったままで外界から完全に隔離され、その間が心地良い。窓の外の景色は絵のようで、それを見ながらイルカは一晩中犬を抱き締め、カカシの帰りを待っていた。
さらさらと流れ落ちるイルカの心。ナルトの事で辛い目に合い、記憶を操作するように為り。このところ安定していた筈なのに、昨日のカカシの話にやはり無理だったかと。
二人が離れ離れになる。―嫌だ嫌だ。誰が悪いの、私が悪いの、何で離れなきゃいけないの。
あの時イルカは動揺していたから。カカシが離れるつもりは全く無い事など判っていない。
二人で誓い合った筈なのに、『離れる』と云う言葉に全て意識は行ってしまった。それは今のイルカが一番怖れていた言葉だから。
忍犬がお腹が空いたと催促して、イルカは漸く我に返った。ふうと溜め息を付いて餌の支度を始める。大きな体に見合った量を食べるので朝と晩の支度には手間が掛かるが、普段構えない分甘くなるのは仕方ないとイルカは思っていた。子ども達にするように。
満足して居間の定位置に寝転ぶ犬を見ながら、イルカはソファに深く腰掛けた。カカシがいなけりゃ何をする気も起きない。
カカシさん、早く帰って来て、と心の呟きは知らず声に出ていたようだ。忍犬が耳を動かし、顔をイルカに向け首を傾げた。何、と言っているような表情にイルカはくすりと笑って何でもないのよ、と頭を撫でてやった。
そう、何でもない。本当に何でもないのだ。たった今、イルカは『何でもないのよ』と言って忘れてしまったのだから。
何を。
―カカシの言った、イルカにチャクラが無い事が知られたら引き離されてしまう事。
何故。
―傷付く事を怖れるあまりに。
言霊を使って。
次の瞬間、イルカは溜め息と共に大きなソファにごろりと横になった。こんなにもカカシに依存している事にはイルカは気付いていないけれど。カカシと云う毒は、既にイルカの髪や爪の先に迄回っている。イルカはカカシが居なければ、人間としてさえ生きてはいけないのだ。唯一のこの結界の中と云う空間だけはカカシのチャクラに依り安定していたから、まだ正気を保っていたけれど―。
眠いなあと。カカシにチャクラをやってしまったせいか、体力を温存する為の自己防衛か、唐突に眠くなる。
それでもまだ忍びとしてのイルカは居る。

微かに音がして、結界に侵入者があった事を知る。勿論入れるのはカカシだけだから、イルカはとろんとした目で玄関の方を見て、その姿を待っていた。

オレの姿に、イルカは眉をしかめて怪我を探る。少しのち笑みを零してソファに寝転んだままオレに両手を伸ばすので、急ぎ足でベストを脱ぎながらイルカに向かって歩いた。
床に膝を突き、イルカの腕の中に収まったオレは只今帰りました、と口付けた。朝の内に帰れると思っていたんですけどね、随分遠くに行かされました。とオレは笑って肩を解すように伸びをして、イルカの体を抱き返す。
お疲れ様でした、とオレを信じて待っていただろうその揺るぎ無い黒い瞳にオレが映る。眠ってないでしょう、と目の下の隈に舌をはわして欲を煽る。睡眠不足の身は敏感で、疲労の溜まるオレも敏感で、お互い余裕無く衣服を急いで脱ぎ捨てる。忍犬は察しが良く、ふいと二階へ登って行った。
ごめん汚くて、とイルカの耳に唇を寄せると、構わないからとオレの腰を引き寄せた。
柔らかな乳を揉み首筋に噛み付くと、高い声が上がる。痩せた、と苦労させた事を胸の奥で悔やみながら、オレはイルカの膣に指を突っ込み、掻き回しえぐりとろとろに熱くすると、よだれを垂らしてそそり立つ陰茎をぐいと突き立てた。ぐちゃと音がして、イルカがのけ反る。一気に突いたのが子宮に響いたのか、オレの背中に爪が食い込み、その痛みが猛った今はかえって気持ち良く、陰茎は更に硬く膣の襞を擦るように怒張した。あ、という声と膣が締まるのは同時だった。イッたと解ったのは、襞が吸い付き温かいぬめりが下りて来たからだ。小刻みに体を震わせ、快感の波に飲み込まれたイルカ。そのまま続けては辛かろうと呼吸を整えさせ、波が引いた後オレもイカせて、と後背位でぐりぐりと竿を回すと、イルカの穴がぎゅうと締め付けオレを離さない。角度が変わって新たな快感が襲ったようだ。いきます、と激しく数回突いたところでオレも息と共に精液を吐き出した。今日も良かったねえ。ヤル度に良くなる体を、もっと淫乱に仕込んでやろうとオレの笑いは止まらない。
食べるものが無いから買い物に出ようと、オレ達は夜の薄暗い月下に寄り添って歩き出したが、突然イルカが他人の気を怖がり、頭を押さえうずくまった。チャクラが流れ込むと。
急いでオレは簡易結界を張ったが、イルカはその中で気を失った。
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