七日目
毎日反省と復習はしていますか。
お相手に嫌われるような事はしていませんか。強引に事を進めていませんか。
もし反省点があれば昨日のページを見直してください、まだ間に合いますから一歩退きましょう。
『緩急付けて』です。
強引ではない、とカカシは思う。それどころか引きすぎじゃないか、カッコ悪すぎる。溜め息は今日は何回だ。
「さんじゅうろく。」
声に出ていたのか、棒読みにナルトが指を折った。
「カカシ先生諦めたら?」
サクラの冷たい声が突き刺さる。サスケが頷く。
「嫌だ。」
思わず返事を返した。絶対に諦めない。
「イルカ先生って、結構言い寄られてるんだってばよ。」
ぴくりとカカシが動いた。が、そこで固まる。
「悪いけど、カカシ先生がイルカ先生を狙ってるのあたし達は知ってるんです。」
あ、とカカシは右目だけでもよく解る間抜けな表情を三人に晒した。
気付かれていたとは思わなかった。忍びのくせして忍べないなんて。
「何でオレは駄目なの。」
子ども達の前で、カカシは初恋に右往左往するアカデミーの生徒より情けない。
「だってよ、スケベな本読んでいっつも違う女の人と歩いてるし。」
「昨日は最高だったってうっとりしてしがみ付いてたら、あたし達だって解るじゃないですか。」
「香水が臭い。」
三人が目をつり上げてカカシに迫る。我慢も限度だとあれこれ言えば、身に覚えのある場面ばかりがカカシの脳裏に浮かんできた。
「いやそれはだな…、」
「イルカ先生が泣かされるのは、ぜっっったいに嫌なんです!」
サクラが涙を浮かべてカカシを怒鳴り付けた。
激昂したサクラは踵を返して走り去った。ナルトとサスケは初めて見るサクラの様子に驚きながら、慌てて後を追う。
「サツキさんなら、年下だけど任せられる。」
数歩で立ち止まったサスケが振り返って言い捨て消えた。
サツキ? あの?
カカシは嘘だろうと呟いて俯いた。
別に女を連れてたからって、エロ本を読んでたからって、オレがイルカ先生を好きだって事は変わらないし…。
「いってえ、誰だ頭叩くんじゃねえ。」
気付けば紅が拳を振り上げ鬼の形相で立っていた。いやそれはお寺の門の仁王様だね。
「サクラがぎゃん泣きしてたけど。」
ぎゃん泣きって何?
「煩い! それよりあんた、イルカを泣かせる気?」
え、なんで?
小首を傾げれば、馬鹿野郎と別の拳が脳天を直撃した。
「俺の大事な妹だ、泣かせる奴はたたっ斬る。」
アスマも鬼の形相で、紅と二人で仁王門完成かとカカシはぼけっとしていた。
「おい、お前んとこの餓鬼どもが言ってた事は全部事実か?」
アスマは冷静だった。訳があるなら聞いてやる、と幾らか優しい。だが両拳が我慢の限界を示しているのを見て、カカシは逃げ道を確認した。
「…事実だ。」
「何ぃ!」
「アスマ、押さえて。」
いいコンビだ、片方が熱くなれば片方が静める。これで付き合ってないなんて、お前ら嘘だろ。
「イルカ先生の事、知りたかったんだ。」
「は?」
「どうしたら上手くいくか皆に聞きまくってたんだ。」
なるほど、と頷くアスマに紅が呆れる。
「納得しないの。」
あ、うん、と歯切れの悪いアスマは完全に尻に敷かれている。
紅の話では、どうもイルカ先生にも見られていたらしい。元気がない様子に問いただしたら、カカシ先生は私をからかっていたんですと言ったとか。オレは愕然とした。
「誤解だ!」
「昨日は最高だったのよね。」
「それは、」
「何が最高だったのかしら。お得意の寝技?」
いやいや、それはずっと昔の話だし。最近は誰にも勃たないって。あ、イルカ先生ならひと晩寝かせない自信あるよ。
「一生使えなきゃいいのに。」
股間に蹴りを入れてくれそうな紅から身を隠す為に、カカシはアスマの後ろに隠れた。
「その女には酒を奢っただけで、オレはひと晩配膳とお財布係だったんだから。」
二日酔いの女がふらふらしてしがみ付いただけだったと、カカシは目を血走らせて言い訳した。他の女達も皆彼氏や旦那持ちで、いじらしいカカシに協力的だったがちょっと遊んでみたのだった。くのいちは侮れない。
イルカがカカシをどう思っているのか、はたからは判りづらいからゆさぶりを掛けてみよう。あたし達はこんな馬鹿は要らないけどね、可愛いイルカが幸せになれるかもしれないし。
思惑は少し脇に逸れたが、アスマと紅が修正してくれるようだ。
…そういやあの本には相手に嫌われる事をしていないかと書いてあった。そうだ、イルカ先生に嫌われたんだ。
「誠意はどうやって見せるの?」
形振り構わず受付で土下座したカカシに、イルカは悲しそうに微笑んだ。
取り敢えず、二人は寄り添って帰ったけれど。
毎日反省と復習はしていますか。
お相手に嫌われるような事はしていませんか。強引に事を進めていませんか。
もし反省点があれば昨日のページを見直してください、まだ間に合いますから一歩退きましょう。
『緩急付けて』です。
強引ではない、とカカシは思う。それどころか引きすぎじゃないか、カッコ悪すぎる。溜め息は今日は何回だ。
「さんじゅうろく。」
声に出ていたのか、棒読みにナルトが指を折った。
「カカシ先生諦めたら?」
サクラの冷たい声が突き刺さる。サスケが頷く。
「嫌だ。」
思わず返事を返した。絶対に諦めない。
「イルカ先生って、結構言い寄られてるんだってばよ。」
ぴくりとカカシが動いた。が、そこで固まる。
「悪いけど、カカシ先生がイルカ先生を狙ってるのあたし達は知ってるんです。」
あ、とカカシは右目だけでもよく解る間抜けな表情を三人に晒した。
気付かれていたとは思わなかった。忍びのくせして忍べないなんて。
「何でオレは駄目なの。」
子ども達の前で、カカシは初恋に右往左往するアカデミーの生徒より情けない。
「だってよ、スケベな本読んでいっつも違う女の人と歩いてるし。」
「昨日は最高だったってうっとりしてしがみ付いてたら、あたし達だって解るじゃないですか。」
「香水が臭い。」
三人が目をつり上げてカカシに迫る。我慢も限度だとあれこれ言えば、身に覚えのある場面ばかりがカカシの脳裏に浮かんできた。
「いやそれはだな…、」
「イルカ先生が泣かされるのは、ぜっっったいに嫌なんです!」
サクラが涙を浮かべてカカシを怒鳴り付けた。
激昂したサクラは踵を返して走り去った。ナルトとサスケは初めて見るサクラの様子に驚きながら、慌てて後を追う。
「サツキさんなら、年下だけど任せられる。」
数歩で立ち止まったサスケが振り返って言い捨て消えた。
サツキ? あの?
カカシは嘘だろうと呟いて俯いた。
別に女を連れてたからって、エロ本を読んでたからって、オレがイルカ先生を好きだって事は変わらないし…。
「いってえ、誰だ頭叩くんじゃねえ。」
気付けば紅が拳を振り上げ鬼の形相で立っていた。いやそれはお寺の門の仁王様だね。
「サクラがぎゃん泣きしてたけど。」
ぎゃん泣きって何?
「煩い! それよりあんた、イルカを泣かせる気?」
え、なんで?
小首を傾げれば、馬鹿野郎と別の拳が脳天を直撃した。
「俺の大事な妹だ、泣かせる奴はたたっ斬る。」
アスマも鬼の形相で、紅と二人で仁王門完成かとカカシはぼけっとしていた。
「おい、お前んとこの餓鬼どもが言ってた事は全部事実か?」
アスマは冷静だった。訳があるなら聞いてやる、と幾らか優しい。だが両拳が我慢の限界を示しているのを見て、カカシは逃げ道を確認した。
「…事実だ。」
「何ぃ!」
「アスマ、押さえて。」
いいコンビだ、片方が熱くなれば片方が静める。これで付き合ってないなんて、お前ら嘘だろ。
「イルカ先生の事、知りたかったんだ。」
「は?」
「どうしたら上手くいくか皆に聞きまくってたんだ。」
なるほど、と頷くアスマに紅が呆れる。
「納得しないの。」
あ、うん、と歯切れの悪いアスマは完全に尻に敷かれている。
紅の話では、どうもイルカ先生にも見られていたらしい。元気がない様子に問いただしたら、カカシ先生は私をからかっていたんですと言ったとか。オレは愕然とした。
「誤解だ!」
「昨日は最高だったのよね。」
「それは、」
「何が最高だったのかしら。お得意の寝技?」
いやいや、それはずっと昔の話だし。最近は誰にも勃たないって。あ、イルカ先生ならひと晩寝かせない自信あるよ。
「一生使えなきゃいいのに。」
股間に蹴りを入れてくれそうな紅から身を隠す為に、カカシはアスマの後ろに隠れた。
「その女には酒を奢っただけで、オレはひと晩配膳とお財布係だったんだから。」
二日酔いの女がふらふらしてしがみ付いただけだったと、カカシは目を血走らせて言い訳した。他の女達も皆彼氏や旦那持ちで、いじらしいカカシに協力的だったがちょっと遊んでみたのだった。くのいちは侮れない。
イルカがカカシをどう思っているのか、はたからは判りづらいからゆさぶりを掛けてみよう。あたし達はこんな馬鹿は要らないけどね、可愛いイルカが幸せになれるかもしれないし。
思惑は少し脇に逸れたが、アスマと紅が修正してくれるようだ。
…そういやあの本には相手に嫌われる事をしていないかと書いてあった。そうだ、イルカ先生に嫌われたんだ。
「誠意はどうやって見せるの?」
形振り構わず受付で土下座したカカシに、イルカは悲しそうに微笑んだ。
取り敢えず、二人は寄り添って帰ったけれど。
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