「解りません。アタシ、自分が解りません。」
板の間に正座してイルカは俯いた。両手は拳となり、太股の上で震える寸前だ。カカシは向かい合って。
「だったら俺に答えて。」
俺は嫌い?
すかさず首を横に振る。
俺はいなくてもいい?
髪がほつれる程首を横に振る。
俺に抱き着くのは好き?
音がする位頷く。
俺が抱き着くのは嫌い?
もどかしいのか、言葉で小さく好きと答える。
では俺がこうしたら?
カカシはイルカを抱き寄せて、顎に指を掛け顔を上げさせた。
素顔に色違いの両目を開いて微笑むと、イルカの目が潤んだ。顔を寄せると、反射的に瞼が閉じられる。微かな吐息を、カカシは自分の唇で塞いだ。
軽く啄んで一旦離すとちゅ、と音がしイルカは何をされたのか理解して、恥ずかしそうに身をよじった。
可愛い、と思ったらカカシは自然に腕に力を込めていた。逃げるイルカの唇に追い付きゆっくり下唇を舐めると、背がしなり顔が上を向いた。誘うわけではないだろうが唇が開き、ああと小さな声が漏れる。
カカシが舌を差し込むとそれでもまだ逃げるため、イルカの頭を支えて逃がさないと追いつめた。
ねえ、本当は俺の事をどう思っているの。と聞きたいが、カカシは焦りすぎたばかりに先に行動に出てしまった。理性は頭の片隅にあるから無茶はしないが、こうでもしないと先には進めないと思う、それは自分勝手な言い訳だと承知している。
綱手には、合意の元にと釘を刺された。カカシは発情期の犬だとみなされたわけだ。襲って良い関係が築ける筈はないだろ、と女性の意見は正しいのだろうとカカシは股間に力を込めていた。
上手く息ができないとイルカがカカシの胸を押した。やっと触れられる嬉しさに夢中になっていたから、失念していた。
「こーんな事をしたかったの、俺は。」
カカシは振られたら恐いからと、ちょっと軽く言ってみた。諦める気はないが、精神的衝撃は避けたいところだ。
あ、でもいい加減な感じに見えるかも。と思い直し、カカシはイルカの手を取った。
「俺は貴女が好きです。異性として愛して、守りたくて、できれば閉じ込めたくて、結婚したくて、俺のこどもを産んで欲しくて、一緒に年をとりたくて、貴女に死に水を取って欲しい。」
言えた。
返事は。
イルカはカカシの言葉を聞きながら、真っ赤になっていく自分を隠してしまいたかった。二人きりなのに、思い切り恥ずかしい。汗だくだ。
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