「や、やめなさいって。」
流石に上忍だ、声でイルカと判り手は出ない、いや出せない。
カカシを離しごめんなさいと正面に正座して、イルカは笑いを噛み締めながらカカシの目を見る。
ふざけんなと怒ろうにも、イルカが先に謝るので気が削がれた。
こんな所でもナルトの悪戯の師匠なんだ、とカカシは降参した。
ねえ、どうしてカカシが簡単に拘束できたの。とイルカとそう体格の変わらない女性上忍が、不思議そうに尋ねた。
アカデミーの生徒でもできますよ。とイルカは授業を始めた。
「人は立ち上がろうとすると、前傾姿勢で斜め上に体を持っていきますよね。背宛てのない椅子ならそこをすかさず真下に引っ張れば、大抵足の底は床から離れますから、先程のようになります。」
ほおぉー、と感嘆の声があちこちから漏れる。
「多分真後ろから声が聞こえたら、ほぼ全員が一瞬でもそこに意識は行きます。」
なのでクナイや拳が声の位置に出る前に背中に張り付き、それに気付いてもそれまでの少しの確認の間に上忍の方ならば手の届かない場所まで移動できるでしょうし、とイルカはカカシの後ろに立って、さっきのように耳元に顔を寄せた。その姿勢で説明をするものだから、吐息はカカシの頬から耳から首筋まで、薄い布越しにでも温かく甘く。しかしイルカは話に夢中で、カカシの体をマネキン人形扱いして授業は続いた。
柔らかなイルカの全身が密着し指がなぞれば、勘弁してくれとカカシは熱くなる体が辛い。イルカでなければすり寄られても何とも思わないのに。
今朝までもやもやしていた理由がたった今解った。
カカシは自分がイルカに対して特別な感情を持っていると自覚したのだ、恋として。
何で今解っちゃうかなあ、と自分を責める。
苦悩するカカシを置いて以上です、とイルカが笑って拍手が起こる。
じゃあ私でも熊なんか倒せるのかしら、とさっき質問した女性が浮き浮きすると、こっちなら簡単よと紅がアスマを指して投げキッスで倒した。笑いで場は崩れたが、イルカはカカシの側でにこにこと去る様子がない。
お返し、とカカシはさりげなさを装いイルカの腰を後ろから抱いて、大きなスツールの自分の股の間にイルカを座らせた。
守っているようで、何だか嬉しい。けれど股間にはよろしくなかった。
うわ、オレって自覚した途端に発情かよ、とカカシは緊張して自然と腕に力が籠った。ぐえ、とイルカがじたばたしている。
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