ふう。大きな息を肩でつき、イルカは眉間に皺を寄せた顔を窓ガラスに映すと、酷い顔だと乱暴に顔を擦った。何が起こっているのか詳細は末端には知らされないが、受付と朝イチを任されていると何となく見えるわけで、元の教え子達にのし掛かる現実に胸が潰れる思いで毎日を過ごしていた。

綱手が五代目火影に就任した。まず自来也が推薦を拒否し、また旅に出る彼に、ならばいざという時には中央で陣頭指揮を取るべきだ、とイルカが説得した。三代目は自分の側でじっくりと、イルカを上層部も認める参謀として育て上げていたのだ。
そんなイルカを綱手が側に置きたいと思うのは当然で、放浪中も綱手に従っていたシズネも何かと頼る。更に頭の回るサクラが医療忍見習いとして加われば、ある意味最強となった木ノ葉の心臓部だった。

サスケが里を抜けた。イタチを追って、復讐するために私情で動いたサスケを止めるために、一緒に成長してきた仲間達は自分の命さえ賭けた。結果として止められなかったが、彼らはサスケを信じて里を守り、強くなっていった。
大蛇丸は狡猾で、綱手も自来也も裏をかかれて攻防は一進一退が続いていた。
そして暁、得体が知れない彼ら。情報が錯綜する。

イルカの体は、何かに蝕まれているかのように徐々に動かなくなっていた。油女一族の蟲が神経を探ってくれると聞き、こっそり通ってみた。将来は悲観的だがチャクラを八門に回せる内は心配ないと言われ少し安心したけれど、綱手に知られてはならないと立ち振舞いには細心の注意を払い、シズネにもふらつきは睡眠不足から来る疲労だと偽る。
眠れないのは真実だ。忍びにあるまじき、と叱咤されようが構わない。仕事はきっちりこなしている。ただ、子ども達が心配で。そして、カカシが心配で。

時は静かに流れる。その間にも知り合いが、仲のよかった仲間が不意に死んでいく。
流す涙が渇れないのが不思議だ。既に心は何事にも揺り動かされないようになったかと思われたがイルカは表面は穏やかな里で、笑っていた。
カカシが時折訪ねて来ては、他愛のない話をしてくれる。嬉しかった。ただカカシがいるだけで嬉しかった。

暁という集団について、イルカが諜報隊の隊長となったのは自然な流れだった。カカシは心配だと、暇さえあれば綱手の元へ顔を出してイルカの行き先を聞いた。その度に教えはするが、あまりにも煩わしいと綱手が机を叩き割った。
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