酷いありさまだよ、と誰かが落とした言葉が俺の心に波紋を広げた。三代目火影も逝ってしまって、喪失感に俺の行く先は見えない。
けれど葬儀で、木の葉丸にイルカ先生が火影の意志について話しているのが聞こえた。強く柔らかな声が俺の心の波紋を消していく。緩やかに。

自来也様は五代目火影への要請をにべもなく断り、綱手様を推薦して尚且つ自ら探しに出ると言ってくれた。俺は、自来也様にナルトを預けてみようと思った。より高みを目指すには俺以外の誰かが良いだろう、と思うようになっていたから。そうだ、ナルトの思いは既に俺なんかよりも空に近く、父である四代目そっくりじゃないか。

イタチ、サスケの兄。うちは一族を、自分の父母さえ殺して里を抜けた。そして今、混乱の中里を狙うのは何故だ。
「イタチ、お前は何故、何のために。」
俺は額宛てをむしり取り、左目を開けてイタチを睨んだ。やはり強い、本来は瞳術なぞ使えない俺には、必要以上に負担が掛かる。もっとチャクラが欲しいと思いながら、俺はゆっくりと意識を失っていった。

既視感に驚く。病室とイルカ先生と。
私の特大のチャクラ珠が渡せてたら、と俯くのでどれ位、と聞けば腕いっぱいに何かを抱える仕草で答えるので、思わず声に出して笑ってしまった。持って行かれませんよ、と言えばあ、と口を開けたまま耳を赤くした。
私のチャクラは血液型で言えばO型なんです。誰にでも与えられて、その人のチャクラと混ざって発動するんです。と疑問に思っていた事を教えてくれた。それで、と聞く前に誰かの気配でイルカ先生は口を閉ざした。現れたのは。
綱手様、とイルカ先生は弾んだ声を上げて若い姿の女傑に走り寄った。二十年以上変わらない若さを保てる力は、流石医療忍の頂点に立つ三忍の一人。て、イルカ先生がぎりぎりと抱き締められて苦しそう。先生、医療忍にスカウトされてるし。しかも十年越しだって。何でそんなに仲良さそうにしてんだ。
完全に蚊帳の外で、俺は楽しそうなイルカ先生を見ていた。話の端から知らなかった彼女が窺えて、それはそれで良かったけれど。
おやカカシ、いたのかい。とわざとらしい綱手様にお久しぶりですと挨拶すればすまないねえ、と労られて、無茶するなと殴るかと身構えたのに、その手は掛け布団の胸辺りに置かれた。
しかし、もっと働いてもらわなきゃならないんだからさっさと起きろ、とはあんまりだ。
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