「へ?」
ごめん大声出して、唐突だったよね。だって、アタシが何でこの大机の代金を払わなきゃならないの。
アタシはちょこちょこ諜報に出ていて、落ち着いたのは一ヶ月ぶりだ。帰還の報告に顔を出せば途端に、誰もやってくれないから溜まってて、と綱手様から渡された未決裁の書類。おまけに午後の受付に入る奴が発熱で休みで、帰るだけのアタシが入る事になり、特別手当て付きなら喜んで、と。報告の少ない時間帯だからとこっそり書類を仕分けてたら、何故かアタシ個人宛ての請求書を見つけてしまったのだ。アタシ、呆然として暫く固まったままだったみたい。
おーい、帰って来いよー、と隣の同僚に肩を揺さぶられて戻って来た。えっと、先月のいつだったか机を新調したとは聞いたけど。何、備考にはカカシ先生のせいでと書いてあるけど、何でアタシが払わなきゃならないの。て、期限は今日…。
えーえーシズネさんも実務はできませんしね、でもね。
綱手様ぁ、と執務室に乗り込めば二人して逃げやがって数キロ四方範囲には既にいないようだわ。
いきなりすまなかった、と受付に戻り、アタシは上がりの時間まで残りの書類に目を通していた。同僚の憐憫の視線にも慣れたし、アタシ心臓に毛が生えたかもしれない。
ふ、とアタシが片頬で笑ったらガタンと隣の椅子が跳ねたから、上忍待機所で一日修業しておいで、座ってるだけでAランク任務と同等だからと悪態ついてしまった。ごめんよ、八つ当たりだね。

時間が来たから、アタシはさっさと受付を離れた。元凶のカカシ先生は里にいないし、綱手様は今日は帰らないだろうし。
とにかく代金は払わないと、と高級家具店に向かった。店長、代金を払いに来ましたよ。
もはや綱手様の名前ではツケもきかない。アタシは一年分割払いの手続きを取って店を出る。背中に聞こえる、毎度ぉーの喜びの声はむかつくアタシの歩幅を広げるだけだ。
怪我しますよ、と手首を握られた。アタシは拾った小枝を振り回して、アパートまでの獣道と呼んでいい近道を歩いていたのだ。
誰よ、と言うより早く小枝はアタシの手から捨てられ、空いた手には小さな千代紙の包みがあった。反応できませんでした、と素直に認めよう、アタシは中忍だ。
あ、暗部新人の辰面さんだ。と言ったら覚えていただけてるなんて、と大袈裟にお辞儀をされた。
「これはカカシ先輩からです。」
アタシの手の包みを指して。
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