残していってください。
アタシはとっさに叫んでまた崩れ落ちた。
「後から行きます。」
無理だ、脚が使いものにならない。悔しい。
一緒にと言った同僚は一人担いでいるにもかかわらず、黙っていきなりアタシの腰に腕を回して、ちょっと驚いたけど支えてくれてゆっくりと歩き出した。
「写輪眼がここまでお前を運んでくれたんだ、帰って礼を言え。」
支え方が上手いなあ、アタシ歩けてる。あ、はい、え?
ぼうっとして反応が遅れたわ。え、そうなんですか、アタシが意識を失った後で。
敵がカカシ先生を狙って襲ってくるのが解っていて、アタシより先に助けなきゃいけない人が沢山いるのを知っていてそれでもわざわざ、ここまで。
歩きながらさっきアタシが跳び回っていた場所を振り返ると、目測でも数キロあった。あそこからなんて、カカシ先生なら簡単なのかもしれないけど、アタシなんか放っておいても良かったのに。
動かない脚が、忍びとして失格じゃないのかとアタシに問い掛ける。そうよ、解ってる。こんな非常時でなければアタシは必要とされない。
悔しい。カカシ先生に近付いてはいけないのだと言われているような。
駄目考えるな、今はまだ。

「自来也様…。」
懐かしいお姿に涙が零れた。袖で顔を拭いたら袖が真っ黒になって、アタシは酷いことになっているのを改めて知る。それでも自来也様は構わず胸に抱いてくれた。その手がお尻を撫でた時には、アタシの頭突きが顎に炸裂しちゃったけど。
いやいや、エロ爺なんてすみません、つい昔の癖で。
アカデミーの校庭が緊急避難場所になっていて、救護所となった一階の教室全てが怪我人で溢れている。武道館は死体安置所だ。
アタシは一般の医療器具でひたすら治療を続けた。チャクラはそう簡単には戻らないから、止血すら手間が掛かる。
夜中になり漸くひと息つけた時に、大蛇丸はカブトと共に逃亡しひとまず戦いは終息した、と報告を受けた。
これが後に木ノ葉崩しと呼ばれ、過去の大戦どころか忍びの存在意義すら根本から覆す戦いに発展するとは、アタシは欠片も想像しなかった。
三代目の葬儀の準備に回れ、と指示された。ああ、と思い出したら怒濤のように様々な感情が押し寄せて、アタシは貧血をおこして、でも誰にも迷惑は掛けられないと暗い片隅にうずくまる。
やっべ、限界。と掠れた声が漏れたらあんた男らしいねえ、と長い腕と大きな手が抱き込んだ。
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