願わくは、命だけでも繋いで、と自分のチャクラを真珠のような珠にして渡し続けた。持っているだけで自然にチャクラを充電できますから、と一回こっきりだと確認して、誰とも判らない敵に向かう同胞を送り出す。
だが二十人あまりが限界だった。残しておかなければ、自分が帰るためにほんの少し。
立ち上がりめまいを感じた瞬間に、頭上から襲ってくる気配を感じた。
体が追いつかない、確実に喉元を刺されると覚悟を決めたが、一瞬のちにはその体が目の前に死体となって横たわっていた。何で、と言ったイルカの背中に張り付いたのはカカシだった。
「聞いた、チャクラを分けるなんて馬鹿か、でもありがとう。」
後ろから抱き締められてイルカは驚き、カカシを振り返った。
「アタシこそ、助けてくださってありがとうございます。」
カカシからは血の匂いがしない。よかった、と吐息が漏れた。イルカは仲間達の手当てをしながら唐突にカカシが死ぬのではと思い、一人一人にカカシの行方を聞いていたのだ。
誰かのために怪我をする、誰かのために死にに行く、誰かのために…、そんな刹那で生きているカカシ。それを知っているからイルカは、三代目のために役に立って死ねるなら、なんて思いながら一人で死んでいくのではないかと軽くパニックに陥っていた。
カカシの逞しい体が本物だと判った途端に、イルカは反転して自分から抱き付いた。嬉しい、何でこんなに嬉しいのか解らないけれど嬉しい。
―待って、チャクラないじゃない。抱き締めたカカシからは、あの入院中とほぼ同量程度しか感じられない。
イルカはカカシの背中でとっさにチャクラの珠を練った。振り絞った気力でどうにか小指大の珠ができたので、黙って腰のポーチに滑り込ませた。本人が意識しなくても発動するんだから、入れちゃっていいよね。
イルカ、とカカシに呼ばれたのは気のせいだったろうか。ずんと体も意識も重くなり、イルカは膝から力が抜けたのを最後に認めた。
気が付いたのは、ぎりぎり戦闘の外側だった。アカデミーの教師達が重症の忍びを更に外側へ運び出している。何とか体を起こしたイルカに、歩けるなら戻れとアカデミーの方を指す。
カカシから聞いた、もう休めと先程イルカを叱りつけた同僚が、一人担いで一緒にと促した。折れて転がる木の枝を杖にして歩き出したが、片脚の神経は死んでしまったかのように役にたたなかった。―ちくしょう。
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