「照り焼きは好きなんだけど、この魚はあんまり焼いてな…」
誤魔化すように話題を変えてみたが、カカシは失敗した。
どうでもいい話の語尾は三人の大声に消され、きらきらした六個の目は食らい付かんばかりにカカシを見詰める。
「それはどういう事だってば、カカシ先生。」
「冗談だったら爆死させるぞ。」
「今年アカデミーを卒業したばかりの下忍を大量受験させるって噂はありましたけど、本当なんですね。」
ああ言っちゃった、というカカシのしゅんとした様子は完全に無視だ。折角だから退院して任務前の集合の時にビシッと決めたかったのに、と言い訳のように呟くと待てるかよ、とサスケの痛い目つき。
「もう正式に発表されるから言っちゃう、二ヶ月後だ。」
途端にまたわあきゃあ騒がしくなって、個室とはいえ当然怒られる。三人は病室を追い出され、カカシは家まで歩けるなら帰って寝てろと翌朝には強制退院となった。
空腹になれば買い置きの水分の蒸発し始めたパンやらをかじり、する事もないし何より怠いからと埃臭いベッドに転がり、つらつら考える。
僅かだがチャクラの戻りが遅くなっているのは術のコピーが続くような戦闘が幾つかあったからだと医者に言われて、カカシもそう思っていた。イルカに指摘されたような写輪眼と身体の関係性は、前例の無い移植だから気を付けろと三代目火影に言われてはいたが、生に執着しないカカシはそれでもいいですと頷いたのだ。オビトの遺志は自分が受け継いで、里の為に使って死のうと決めたのはもう十数年前の事。決意を覆すだけの何かは未だないからいつ死んでもいいと、しかし最近は下忍の部下達の成長ぶりがほんの少しだけ決意を揺るがせる。もう少し先の彼等を見たい、と。
俺解んなくなったよ先生、親父、と呟けば瞼の裏で二人が笑っていた。お前が好きなようにすればいいんだよ。
あー、言いそうだよな、この人達。うん、そうするよ、ありがとう。
家で一日ゆっくりしたその晩には体調は元通りになり、明日は通常任務ができるだろうと火影に復帰を請う鳥を飛ばして、夜の街を散歩に出た。
あ、と感じた気配はイルカのもの。近くの家の屋根に飛んで目をつむり、皮膚感覚で探れば一つ左の通りにいるようだ。
何歩か飛んでこっそりと屋根の上から覗くと、イルカは仕事帰りの食事会だったのか、小さな定食屋からアカデミーの教師達と笑い転げながら出てきた。酔っている。
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