「せっかくのイルカ先生の心遣いなんだから、残さず食べなさいよ。」
「でもサスケんちにも行くんだろ、オレもカカシ先生と一緒に行って、んで三人で食べるんだってばよ。」
とナルトは自分とサスケの分の包みを大事そうに抱え、カカシの返事を待たずに飛び出した。
まぁいつもの通りに人の話を聞かないねぇ、でも行き先は解るから、とカカシはのんびりと歩いた。ナルトより数分遅れて到着すると、一人暮らしには広すぎる家の中から聞こえる声は喧嘩の様相を呈している。
それもいつも通りだし、聞いてみればやはり剣呑な内容ではない。
「はいはい、何を揉めてんの。」
と睨み合う子犬のような二人の間に割って入り、カカシは両手でその頭をわしわしと撫で付ける。
うるせえ、とサスケがカカシの手を払い摺り足で後退し、足元に視線を落とした。
聞こえてたからね、もう終わりにしないとイルカ先生の作ったご飯は全部貰ってやる。とからかい気味のカカシに、駄目だってばよ、とナルトの叫び声に駄目だ、と珍しいサスケの大声が重なった。
猫探しや農作業の任務もこれくらい食い付いてくれないかと笑いながら、カカシは降参というように手を上げ、殺風景な台所の食卓に料理を並べ始めた。
三人で食べきれるか難しい程の量と種類。改めて見ると、雑談の間によくこれだけ作れたと感心する出来映えだった。
「イルカ先生って子どもの頃から大量のご飯作るの慣れてるらしくてさ、アカデミーの野外授業でもよく食べさせてもらってたんだってばよ。」
ナルトは自慢気に言いながらあれもこれもと口に詰め込んで喉に詰まらせ、サスケに頭を叩かれている。
へえ、そんな実戦みたいな事もするんだ、とカカシは素直に驚いた。アカデミーの教育内容など、通ったことのないカカシはまるで知らなかったのだ。野草だけでなく小動物も狩って調理するなんて、子どもでもちゃんと忍びなんだなあ、とアカデミーを軽んじていた自分を少し恥じると共に、またもやイルカを見る目が変わったカカシだった。
だが更に、美味しい蛙の見分け方や猪の臭みのとり方をサスケから聞くとは思わず、イルカは絶対階級を偽っているとカカシは確信した。意外性ナンバーワンの恩師はもっと意外だったのだ。
そうしてカカシはイルカが気になる存在になっていった。他人に関心のないカカシがどういった形であれ己れの懐を開くとは、アスマが知ったら酒宴を設けるだろう。
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