「カカシ先生は単独の任務みたいだけど、明日は帰ってくるのかしら。」
お鍋の蓋をそっと開けながらサクラが呟いた。
うーん、とアタシは曖昧な返事をした。ちょっとマズイ事になってるらしいから、無理だろうな。
と、そんなアタシの顔を見てサクラは話題を変えてくれた。考えてる事解り易すぎっていつも笑われる、教師失格のアタシはいぃーって思い切り変な顔をしてやる。
「さあ遠慮なしに全部食べなさいよ。」
その先からはご近所迷惑な程に大騒ぎだった。鍋が空になるまで競いながら食べる男の子達が、確実に成長しているのがこうして見ているだけでも判り、アタシは少しだけ寂しいと思いながらも嬉しかった。
「これでもう、アタシの出番はないのかな。」
座卓についた肘に顎を乗せて三人の笑顔を見ていると、自然に溜め息が出た。
「駄目だってばよ。」
ナルトがゲップを堪えながら言い放った。
続けてサスケがアタシを睨んで声には出さずにふざけんな、と口を動かした。
サクラに至ってはまた後ろ向きだよこの人、と顔に書いてある。
解ってるんだけどね、だってつまんないじゃない、折角皆の下忍としての成長が見られると思ったのに、一年間は必要以上の接触は認めないって。
あ、今日は火影様の許可があるからいいんだよね、と言い訳しながらもカカシ先生に知られたら何を言われるかと、脇と背中にじわりと汗が滲んだ。
いやいや大丈夫、と浮かんだイナヅマを光らせる鬼の顔を打ち消しながらアタシは、お開きだよと三人に告げた。途端にまたご近所迷惑な叫びが部屋中、いや表の通りまで響いた。
うちの前で立ち止まる気配は、…暗部の人だよなあ。うん。しゃあない、と通りに面した窓を全開にし、ごめんなさぁいと受付でどんな男もオトスと言われる笑顔を、何処にいるかも判らない暗部さんに向けてやった。
あ、気配が消えた。ほっとして、子ども達に軽くげんこを落として説明すると、皆うなだれたまま玄関で靴を履いた。
だが。帰り際にそれさえナルトがすっかり忘れてまた大声で、お休みなさいと挨拶した。並びの部屋のドアが一斉に開いて、アタシはただひたすら頭を下げナルトの尻を蹴飛ばして三人を追い出したのだった。
明日は頂き物のお裾分けだと偽って、何か買って配らなきゃ、と脱力したアタシは片付けの途中だというのに布団に転がって、そのまま眠ってしまった。
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