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刺激
では、やってみたまえ。
とよく通る声は高い崖に囲まれた谷中に響き、号令と共に何十人もの子ども達の甲高い返事が聞こえた。小さな双子もそれに習い、大きく返事をする。
当然の事だが、砂の里にも忍者の養成機関はある。ただ木ノ葉の里とは形式が違い、学年制の学校ではない。今ここにいるのは十才未満の希望者で、資質はそれほど問わずただ真剣に忍者となり里のために尽くす覚悟がある、という制約のみで参加している。だが小さなうちはそれほど切羽詰まる事情もないためか、基礎知識習得と体力作りを目的とした最初の半年で半分近くが脱落し、その後はそれまでの半年をかけた適性検査により、実戦や医療や情報等の各コースに振り分けられる。
今ホナミとミナミがいるのは、その最初の段階だ。見学という名目の元、好きなように参加してみたらよいと我愛羅に言われた。幼すぎるためにすぐ飽きるかと思われたが、チャクラコントロールのための瞑想と忍具の名称と使用方法を覚えるという数時間を真面目にこなし、教官を驚かせた。
「やはり血筋ですかな。とすると、うちでもご兄弟方に期待してしまいますなぁ。」
一緒に見守っていたテマリは、矛先を向けられげんなりとした。既に見合いの話が各里から舞い込んでいるのだ。
まだ早いと断っているが、すぐに結婚するわけではないと我愛羅は鼻で笑い、カンクロウに至っては話が来るだけいいじゃないかとかえって乗り気だ。
むすっとしたテマリはその教官を睨み付けた。
「あたしが里を出てってもいいんだね。」
いや、それは困りますなぁ、と笑って教官は薄い頭を掻いた。我愛羅の後ろで里全体を見渡すテマリがいなければ、現在の繁栄と秩序は保てる訳がない、と知っているのだ。
いいからあの子達を見てやってて、とテマリは無理矢理話を終わらせて立ち去ろうとしたが、お姉さん気質が双子達を応援してしまいどうにも立ち去る事が出来ない。
昼休憩、という教官の声で双子はテマリの元へ走り、両側から手を握る。あのねえ、聞いてよ、とそれぞれ興奮して一気に話し出すのを抑えきれないテマリの後ろからこら、とドスのきいた声がそれを押しとどめ、二つの小さな体をひょいと抱え上げた。
カンクロウが二人を両脇に横抱きにしてさっさと歩き出す。お前らは飯喰って昼寝だ、と言われて抱えられたまま暴れていたが、案の定昼御飯を食べながらミナミが寝てしまい、目を擦りながら頑張って読書の時間なんだと広げた本を枕にホナミが眠った。
「この子らがいい刺激になってるよ。」
寝顔を見ながら、テマリが我愛羅に笑い掛けた。
何の事だ、と聞き返す里長はやはりまだ全体が見えていないようだとテマリはこっそり溜め息をつく。
「大人もこどもも、自分達が井の中の蛙だと知る事さ。」
ああ、と我愛羅も笑顔になった。よそのやり方も、良ければ取り入れなきゃ発展しないものだしな。
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