13

二人で
イルカの気配が消えたことで、ホナミが置いていかれたと察して涙を溢した。それを慰めようと、かあさまはすぐ帰るから、と言いながらミナミにも涙は伝染していった。
小さな嗚咽のうちに気付けたのは我愛羅だけだった。
何と言ってあげたらいいのか判らないから、抱き締めてあげるしかない。けれどそれが正解だった事を我愛羅は知らない。
二人のこどもは我愛羅の胸に顔をぎゅうと押し当てて、大きな泣き声になりそうなのを堪えた。
我慢しなくていいよ、と自然に言えた自分に我愛羅は驚いた。小さな温もりがいとおしい事にも。
そうして片隅で暫くそのまま動かない彼らを、誰もが見ない振りをしながら見守った。
長いようで短い数分後、気が済んだのか居心地悪そうにホナミがそっと顔を上げた。ごめんなさい、と小さな声で素直に我愛羅に謝るが、ミナミは顔を伏せたままだ。気が強いから、自分の感情をさらして弱い部分を見せようとしない。まだ二才だというのに。
だが我愛羅には理解出来るのだろう、ミナミの背中を軽く叩くとそのまま抱き上げ、ホナミの手を引いて自分の部屋へ連れて行った。
我愛羅は暫く腕を組み、まだしゃくりあげるこども達を見詰めていたが、顔を覗かせたテマリに今日の夕飯は二人の好きなものにしていいかと聞いた。
眉を寄せた後にっこり笑って仕方ないね、とこども達の泣き腫らした目元をさすり、テマリは我愛羅の部屋に用意しておいた食事を運んできた。
「あんたらのお母さんは凄いね。こうなるだろうってあたしに言ってたんだよ。」
ミナミ、その顔は皆に見られたくないだろ。此処で食べな。とテマリはミナミの顔を覗きこんだ。
カンクロウがドアの隙間からその様子を窺う。自分はこどもに好かれないと決めつけて、今までも話し掛けられなければ近寄ろうともしなかった。
「カンちゃん、ありがとう。」
とホナミが駆け寄って手を引くと、カンクロウは油断していた為にふらっと部屋に入ってしまった。
あっ、いや、と引き返そうとしたがカンクロウの手はホナミが握ったまま離そうとしない。
居心地悪そうに壁際で目をさ迷わせるカンクロウに落ち着け、とテマリが声を出さずに言う。諦めて胡座をかいて座ったカンクロウがこども達にご飯を食べるように促すと、二人はわざわざカンクロウの前に食事のお盆を運び、向かい合って嬉しそうな顔をした。
調子狂うな。
カンクロウがテマリと我愛羅に視線を送り助けを求めるが、二人とも笑うだけで動こうともしない。
気が緩んだのか食事の途中でミナミがいねむりを始め、続けてホナミも大きなあくびを連発し目を擦り出した。
テマリが後ろから二人の体を抱き止め自分に寄り掛からせると、暫くして気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。部屋の中には温かな感情が溢れる。こんなのもいいもんだな、とカンクロウが微笑み、穏やかに夜は更けていった。
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