12

初めての
潜入捜査の仮期限はまだ一週間以上あったので、イルカは薬師の老夫婦の元へ戻りたいと思っていた。
カカシは里から呼び戻されてすぐ帰る事になったが、自分は今アカデミーでは担任を持っていないから、急ぐ理由もない。いや本当は受付もアカデミーもイルカの帰りを心待ちにしていたのだが、連絡はイルカの元まで届いていなかった。
まあ、いいよな。
と握り潰したのは他ならぬカカシだったし、木ノ葉の皆も見ない振りをしてくれた。
それは、小さなこども達が一週間で我愛羅に劇的な変化をもたらすとは思えなかったが、何かが掴めるだろうという確信があったからだ。
「え、じゃあミナミ達二人だけで此処に残るの。」
ミナミの言葉は、寂しそうでもあり楽しそうでもあった。ホナミは表情には出さなかったが、イルカの手を握り置いて行くなと無言で訴えていた。
「ん、薬屋のおじいちゃまとおばあちゃまに報告したら迎えに来るわよ。」
イルカも少し無理をして微笑んだ。まだ二才のこども達が何日も両親と離れていられるとは思えないが、我愛羅にはこの二人だけで接触させたいと思っていた。それと草であるおやじさん達には、里からの報告以外に詳しく砂の里の情勢を知っておいて欲しかった。もしも何か砂の里に起こった時に、助けてくれとは言わないが一番に情報をくれと、イルカは頭を下げてお願いするつもりでいたのだ。
他里に何故そうまでするのか、とイルカに問うのは間違いであろう。皆仲間で友達で、ましてや苦楽を共にすれば家族同然ではないのか、と逆に問い返されてしまう。

私は木ノ葉の忍びだから、とイルカがこども達二人の目を見ればナルトの真似をして親指を立て解った、と頷いてくれた。
ほどなく搬送終了の手続きを終え、木ノ葉の忍び達はそれぞれ散っていった。
まだ外は明るい。イルカは明日にすべきか悩んだが、こども達が知らない場所のもの珍しさに気をとられている内がいいだろうと、すぐ発つ事にした。
確かあの地には一般人向けの学校があった筈だ。草の忍びのこどもは純粋に学業を学びに通っている、と以前聞いた記憶がある。ならば忍術などは何処で、誰に習うのだろう、とイルカの教師魂は燃え既に心は此処にない。
イズモとコテツは、おやじさんの元へイルカを送り届けてから帰るという。回り道になるからと断ったが、カカシからも言われているしその後急げば問題はない、と胸を張って笑う二人に仕方ないと、イルカは横を向いて溜め息を落とした。
確かに安全とは言い難いがそこまで過保護にならなくても、と思うのはイルカだけだ。自分がどれだけ里にとって重要人物なのか理解していない。
「じゃあ、私は行きますから。」
と微笑み、テマリにこども達の嗜好や癖を教え、イルカは発っていった。
そうして木ノ葉の者は誰もいなくなって、改めて小さな二人は心細さを感じ始めた。
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