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旅路
雨が降り出す直前に宿に着いた。ここは国境を越えた最初の宿場町だから、もう任務は始まっている。
こども達のチャクラを封じ、カカシとイルカも忍びに悟られない程度に力を抑えておく。まるきり消してしまうといざという時に術を出しづらいので、両手の指先に小さな炎がともる程度に。
「一般人でも、これより力のある人はいますものね。気付かれませんよ。」
そうサクラのように、一般人の両親を持ちながら生れつき強いチャクラを持ち忍びになる幸運な者もいるが、一生力に気付かない場合もままあるのだ。
さあて、とカカシは伸びをして畳に寝転んだ。
旅の親子は歩き疲れてくたくたなんだよ、と笑いながら疲れてもいないのに眠いふりをする。何処に目や耳があるか判らないから、少しも気が抜けない。
利口なこども達は旅立つ前に湯治を兼ねた商談の旅だと聞かされて、うちは何の商売をやっているのか、規模はどれ位か、などと聞き返した。
だって裕福だったらそれなりのお気楽さがないと変だし、門前の小僧は習わなくても専門家になるでしょ、とニ才足らずの子らは揃って右へ首を傾げた。
はいよく出来ました、とイルカは学校の延長のように二人を褒め、完全なる設定を詳細に話して聞かせたのだった。
小さいながらも火の国の中心部に店を構える老舗の薬屋で、従業員を何人か雇える程度のゆとりはある。わざわざ若旦那とおかみさんが商談に訪れたのは、じかに薬草を確かめ永続的に取引を成立させるためと、こども達が生まれてからゆっくりする時間のなかった二人に休息を与えようと、大旦那様が言ってくれた事による、と。
「俺は薬なんて全然判らないのに、何で薬屋なんだろうかね。」
横になるうちに本当に眠くなったカカシは、欠伸をしながらこんな薬を作ってます、という見本の袋を弄び始めた。
「私が解っていればいいんですよ。貴方は元放蕩息子で、私が改心させたんですから。」
かあさま凄いね、と娘が笑う。大店の箱入り娘がよくやるね、と息子も瞼を閉じそうな父親を寝るなと揺する。
頼んでおいた夕食が届くと親子はゆっくりそれを楽しんで、明日以降の気の抜けない任務に備えて早目に床に付いたのだった。

翌日は本当に薬の商談に出掛けた。ただ相手は、草としてもう二十年も土地に住み続ける木ノ葉の忍びであったが。
情報交換は酒を介して一晩続いた。薬屋は若き日の火影の片腕とさえ言われた凄腕の忍びで、しかし今は穏やかな好々爺にしか見えない。そして奥さんも品のいいおばあちゃまであるが戦闘くのいちのトップに君臨した伝説の人で、今でも二人して訓練は毎日欠かさないという。
「見えませんよねぇ。」
イルカの感嘆の溜め息に奥さんはころころと笑ってこども達のおやつを用意しながら、だってプロでしょ、貴女も同じようなものじゃないと頬をつついた。
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