2

結論
イルカがただいま、と言う前に玄関のドアが開けられた。エプロン姿のカカシが、両肩にこども達を張り付けたまま出迎えてくれる。
荷物を床に下ろすとどさっとそれなりの音で疲労をあらわし、帰宅の安堵とこれから話し合わなければならない憂鬱に、イルカは座り込んでしまった。
お疲れ様、とカカシはイルカを抱き上げリビングのソファまで歩くと、膝の上にイルカを乗せたまま座った。
カカシは家では素顔なだけに、表情が丸判りで怖かった。覗き込まれてイルカは背中を反らせて逃げようとしたが、小さな体は長い腕に絡まったようにびくともしない。
まずい、と無理矢理笑顔を作ったが失敗した。
「で、何。」
来たか、とイルカは意を決してカカシの目を見て話し出した。書類に書かれている事は勿論、上司の言葉の裏の意味合いまで全て包み隠さずに。
ふうん、そう。と冷たいカカシの返事とも相槌ともつかないひと言。そして黙ったままじゃれつくこども達を眺めていたが、やがて軽く微笑むとイルカに向かいいいんじゃない、と言った。
え、とイルカは目を見張った。聞き間違いかとカカシを見れば、入園させればいいんじゃない、と笑う。本当に、とイルカは再度聞き直してしまった。
大事な話だからとカカシがミナミとホナミを追いやって、二人はソファに座り直した。
「いいの? 貴方、早期教育なんてあれ程嫌ってたのに。」
イルカの問いにカカシは片頬で笑って答えた。
「思惑に乗ってやるのが一番の解決策じゃないかな。」
ああ、そうか。とうなづいてイルカはカカシの考えを悟った。自分達の子らがお偉方の思うように動き、成長する訳がないじゃないか。あんな一瞬先の行動が親でも読めない、明日の成長も想像以上だろう二人を。
にっこりと微笑み合って話を終えると、親子四人は夕飯の支度の続きを始めた。あと半年足らずでこのちびっ子達がどう成長するかが非常に楽しみだと、はやる胸を抑えて。
翌日、了承の言葉に静かに安堵の溜め息を漏らした火影に、イルカはどれ程の重圧があったのか察して心が痛んだ。そして入園後のこども達の起こすであろう騒動を思うと、更に心が痛んだ。
取り敢えずひとつ悩みは消えたが、次から次へと厄介事は起こるものである。カカシとイルカに、夫婦としての一ヶ月の長期任務が与えられた。
ただの諜報だが危険性もかなり伴うため、ミナミとホナミは連れて行かれないという。カカシはそれなら引き受けないと依頼書をぐしゃりと握り潰し、その日の単独任務を物凄い速さで終えると、翌日の予定も聞かずに行方をくらました。
またもや泣き付かれたイルカであったが、今回はイルカも受付嬢を体調不良として欠勤して、受付業務を翌朝まで大混乱に陥らせた程の怒りようであった。
教訓、怒らせるな。と改めて忍び全員は胸に刻んだそうな。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。