NARUTO　カカイル二次創作小説　（女イルカあり）

十一月　おまけ
「んで、何だ。おめぇそれだけか。」
上忍待機所でアスマに話を聞いてもらい、カカシは自分の行動思考に同意をして欲しいとつまり同情してもらおうと思っていた。いつもならそんな事は微塵も思わないのだが、今回の出来事は色んな意味で立ち直るのが難しかったのだ。
そして話をした結果の、アスマの返事が。
「え、それだけって。」
とカカシはそっぽを向いたアスマに縋るように身を乗り出した。なんかさあ、もっと言う事あるでしょー、と耳を伏せた犬のようなカカシが面白くて、アスマは意地悪をする。
「めんどくせー、そのままヤッちまえばよかったのに。」
途端にソファから転げ落ちたカカシが、真っ赤になって慌てる。
おーおもしれぇ、と笑いを堪えるアスマの肩は震えていた。
凄い物音がしたと、一斉に振り返った他の上忍達が見たモノは。
「だってイルカ先生に嫌われたくない。」
と膝を抱えていじける、木の葉の里に写輪眼のカカシあり、と怖れられる人物だった。
いい暇潰しだと直ぐさま伝令は跳び、伝言ゲームは始まった。
当のカカシはイルカ先生どうしてるかなぁ、オレ先に出ちゃったからなぁ、鍵はあれしか無いし、怒ってないといいけどなぁ、といじけたままだった。

「で、何よ。元気になってよかったじゃない。」
とアカデミー隣接の食堂の片隅でお茶を啜りながら、紅はイルカに言い放った。
姉妹のように仲良くしているのだからきっとカカシについて一緒に言及してくれるかと思いきや、そうあっさり言われておしまいになったのだ。
「なぁに、そんなにカカシが嫌だったの。」
ぎくりとイルカの肩が跳ねた。続いて真っ赤になって下を向く。
「違う、だって起きたら…は、裸同然…で。」
「あー、ヤッちゃったと思ったんだ。」
紅はにやりと赤い唇を意地悪く歪め、イルカをからかう。いや楽しーわこのコ、カカシの気持ち解ってないし。
「紅先生どうしよう、私、カカシ先生ひっぱたいちゃったあ…。」
イルカは声を大きくして泣き出した。
おやおや、痴話喧嘩でもしたんかい、と周りの者達が聞き耳をたてる。イルカの同僚の受付員達が目配せをして、そそくさと席を立つ。そうして午後の受付は社交場と化し、任務後の忍び達にお茶が振る舞われ、そのお茶受けにイルカの話とカカシの話が出される事になるのである。
のびたラーメンを前に、イルカはカカシの家の鍵を握り溜め息をついた。カカシ先生は飛び出してったけど、何処に行ったのかな。やっぱり私が悪かったのかな。と銀色に光る鍵を両手で優しく包み込んで目を伏せる。

皆、実に楽しそうに謀略していた。
イルカは授業の後受付に入る予定だったが、熱を出していたと聞いた受付の仲間達に、夕方からぐっと冷え込むから帰れと言われた。
イルカがカカシの家へ向かい、鍵を開けて入ったのを確認して受付に戻る者と、それを受けて任務の後の休暇中なら帰って寝てろと待機所からカカシを追い出し、家に帰ったのを見届けた上忍と。
そして今朝カカシの家の前で修羅場の騒ぎを聞いた受付の中忍は、夕飯の美味しそうな匂いをその家から嗅ぎながら、家路に着いていた。ああ肉じゃが食いてえなあ、と思いながら。