あづい。
と言ったからと涼しくなるわけもなく。
イルカは忍服のズボンの裾を膝迄めくり上げ、長袖も肘迄めくり上げ、全くひんやりとしない畳に寝転がった。
行儀が悪いとは思ったが、疲れでむくんだ足をちゃぶ台の上に乗せると、少し楽になった為か自然に溜め息が出た。
夏休み明けすぐの野外演習は過酷だ。しかも今年は特に暑く、生徒達の水分補給の為に休憩をとりながら毎正時に記録する気温と湿度は、冗談かと思う数字を示していた。
体温と同じってどうなんだろ、と独り言は口から音となって零れる。
今日は幸い倒れる子はいなかったけれど、体の弱い子だっているわけだし。そしたら、そんな奴には忍びは務まらないなんて、切り捨てられてしまうんだろうか。
思考は後ろ向きになっていく。
元はといえばカカシのアホが連絡くれないからだ、と怒りは全く悪くないカカシに向かう。
彼はこの暑さの中、毎日任務で飛び回っているわけだし、ただの我が儘だとは承知してるんだけど。

イルカは思考を止めようとごろりと転がり、うつぶせになった。
背中の汗が服に張り付いて気持ち悪い。ブラジャーを外したくて、服の裾から手を入れて背中をまさぐっていると、ふわっと体が楽になった。
背中のホックが外れたのが判って安心したが、ふと自分が外したのではない事に気付き、勢いよく起き上がるとニコニコしているカカシがそこにいた。
「あんた、」
イルカが口を開いた途端に、カカシの唇がその先を言わせないように塞ぐ。
そのまま抱き締められて驚き、カカシの背中や頭を叩くが離してもらえない。
「どうせ汗をかくんだから、ね。」

別の意味で熱帯夜になった、まだまだ暑い日の事。
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