俺さぁ、とカカシは今や中忍となったシカマルに話し掛けた。

あぁん?

年上の先輩でも構わず面倒臭そうに返す言葉と裏腹に、シカマルの表情は案外優しかった。それ程切羽詰まった声だったのだ。

俺ね、今日、誕生日なんだ。

へーそーなんだ。

棒読みの返事しか返せない。男同士で、だからどうしろって言うんだ。

イルカ先生、何か言ってなかったか。

はあ? 何を?

解っているのにシカマルはその先を促す。うじうじしているカカシが面白かったから、少し虐めてやろうと思ったのだ。
間を置いて、カカシはまた聞く。

だからさ、その、俺の事…。

いいや、オレは聞いてない。

それは本当の事だった。シカマルはイルカからは直接何も聞いていない。
ただ、サクラとイノは相談を受けていて、シカマルはその話を小耳にはさんでいた。

自分で聞きゃあいいだろうが。

言い放ち、うぜーとシカマルはカカシに背を向け、地平線を見渡した。敵さんが来るってのに、余裕がありすぎんじゃねえの。と口には出さないがシカマルは苛立っていた。

出来ればお前に聞きはしない。

カカシも苛立っていた。思い切って相談したシカマルは、まるで他人事のような返事しかしてくれないから。
そう、他人である、という事実はカカシに認識されていなかったのだ。
そこへ奇襲を掛けた敵の忍び達は、可哀相に、としか言いようのないやられ方だった。不機嫌な二人に憂さ晴らしに使われたのだから。

ああ、イルカ先生。せめて帰ったら受付で笑って、お疲れ様とか言ってほしいなぁ。

溜め息は国境から里の大門に着くまで何十回となく、カカシのすぐ後ろを走るシカマルの耳に届いた。あまりに煩く、早く里に帰ってさっさとコイツと別れたい、と眉間にしわを寄せる程だったようだ。
しかしシカマルに最後に聞こえたのは、カカシがひゅうという、息を飲んだと同時に出た音だった。

イ、イルカ先生!

お帰りなさい。私も終わって帰るところです。…いえ、待っていました。一緒に帰りたくて。

よし! とイルカの後ろで拳を振り上げるサクラとイノに、シカマルは軽く手を振ると近付いて行った。
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