一年振りに帰ってみると、里はやはり少し変わっていた。茶屋が一つ、経営者の夫婦が高齢の為閉店した。大きめの総合雑貨店が、更に拡張されていた。
そんな風に、街を歩きながら、一年前との相違点を捜す。
あ、アカデミーの外壁、塗り変えたんだ。

火影の執務室へと廊下を歩いていると、部屋の中から赤ん坊の泣き声が聞こえた。
まだかなり小さい赤ん坊のようだな、とぼんやり聞きながら扉の前に立った。ゆっくり開けると、その隙間からほぎゃあほぎゃあと、耳をつく高音が襲ってくる。びびった。
そこで立ち止まっていると中から懐かしい声に呼ばれ、吸い込まれるように部屋の中に入ると。
少しやつれたイルカが、泣き喚く赤ん坊を腕に抱いていた。
イルカはお帰りなさい、とくたびれた顔で笑って、腕の赤ん坊を渡してくる。おいおいと思いながら、反射的に受け取ってしまった。
赤ん坊がぴたりと泣き止み、笑って手を伸ばしてきた。可愛いなあ。白い髪に青い目、俺の赤ん坊の頃の写真そのままだ。
え?
恐る恐る顔を上げて、イルカを見ると。あ、乳がでかくなってる。
はだけた胸からは、ぽたぽたと白い乳が零れ、イルカは慌てて赤ん坊を受け取り、乳を含ませた。授乳の時間だったのか。
今すぐ婚姻届けを出せ。と綱手様の声に我に還ると、紙が一枚目の前に差し出された。俺?と自分を指さすと、当たり前だとうなづいた。お前の遺伝子が、この子に組み込まれているんだから。調べてあるぞ。
一年前、里を出る前夜。暫く帰れないからと、皆で飲んだ時。
寝坊したと跳び起きた、傍らには裸のイルカが寝ていた。こんな事は初めてで。いや、イルカは気にはなってたんだけど。いや、片思いだったんだけど。そのまま慌てて飛び出し、この一年掛けて思い出そうとしたんだけれど、どうしても思い出せなくて。
まあいいや、イルカが手に入ったし。こどもは可愛いし。
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