カカシの誕生日まであと一週間を切ったが、イルカにはプレゼントも祝い方も決められず悩んでいた。
では直接聞いてみればいいだろう、と言われるのだが、驚く顔が見たいからと頑なに拒んでいる。

私的な付き合いを始めて幾月か過ぎた。私的、といっても食事に行ったりする程度だが。
ならば適当に選んでもよかろう、と思う事もないわけではない。おめでとうございます、と手渡して終わってもよいだろう。

あーめんどくさい。何であたしはこんな事で、試験問題を作るより悩まなきゃなんないのよ。

イルカはギフトショップやファンシーショップ、しまいには商店街を片っ端から覗いて休日の午後を潰してしまった。しかしこれといった物には当たらない。また何日かしたらいい物が入荷するかもしれない、と思って仕事帰りに覗いてみても何も入ってはいなかったから、イルカはどうしよう、と半泣きのままカカシの誕生日の前日になり。

昨年、カカシは誕生日当日に任務がある事が事前に知られていたため、その前後一週間は待機所にプレゼントを持った女性がひっきりなしに訪れていたと聞き、イルカはすっとぼけてしまうのもアリかな、と思い始めた。

ま、約束したわけでもないからね。
と呟いて、夕方まで授業に追われたままいつしかカカシの誕生日の事は忘れてしまったが、夕闇の濃くなる時刻、里一番の百貨店の前でイルカは突然思い出す事になる。
ライトアップされたガラスの向こうの、リボンで括られた四角い箱と壁に貼り付けられたギフトのポスターを見て、うわぁ、と顔をしかめやばいよーと溜め息を付いたところを、当人のカカシに見られてしまった。
軽い笑顔で何がですか、とひょいと横から顔を出されてイルカは何で今いるんですかぁ、と頭から声を出して後ずさった。

はあ、子ども達との任務が終わったので今から帰るんですが。

あーそうですか。お疲れ様でした。

会話を終わらせて足早に立ち去りたいイルカの後を追うように、カカシは歩く。

明日なんですが、イルカ先生が何か用意してくださるって聞いたんですけど。

あ、あした?

あ、俺の…。

あ、え、誰がそんな事を。

受付の方々から聞きましたが、違うんですか。

違わない、んですが、でも。

でも?

実はずっと悩んでいまして、あの、何がいいか。

うん、それで。

結局まだ決めていないんです。すみません。

じゃあ、俺からのおねだりを聞いてくれませんか。

はい、あたしのお財布と体力の範囲でなら何でも。

いやあ、準備はいりませんよ。明日受付でお願いします。

え、何ですか。

大丈夫、お財布は痛まないから。明日の朝ね。

イルカが明日の朝は受付にいると知っていて、カカシはそんな事を言う。カカシの出現にかなり驚いたイルカは、その言葉に疑問を抱かずこくりと頷いた。
とりあえず難問は解決したと思ったイルカは、翌朝まで何も考えずにいたが。

俺の恋人になって、と衆人環視の中で告げられたおねだりに、イルカは真っ赤になって固まってしまった。
何でも聞いてくれるんですよね、と詰め寄られてはいと答えるしかなかったのは、カカシの作戦勝ちだった。
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