はたけ上忍に振られたその夜、イルカ先生に失恋したって泣きに行って、頭を撫でてくれた時にあたしイルカ先生がまだ好きなんだなあって気付いて、よけい泣けてました。
イルカ先生にぎゅうって抱き着いて、薄暗い部屋で、二人きりだから好きなだけ泣けってずうっと頭を撫でてくれて。
昔のように先生でいてくれて。
あたしは泣いてすっきりしました。もう思い残すことなく、二人への想いは断ち切れました。
イルカ先生の腕を離すのは残念でしたけどね、職員室の外にはあたしをつけてきた人が悶々として様子を窺ってましたから。
イルカ先生にお礼を言って職員室を出ると、気配だけある暗がりのそちらに向けてどうぞって声を掛けたら、音もなくあの大きな体をうんと縮めて姿を見せて、ごめんねってあたしに小さな声で言ってくれました。
それに返してあたしは自分が上手く笑えたかと心配しながら、はたけ上忍に頑張って、とエールを送って中に入るのを見ていました。
イルカ先生は湧いて出たようなはたけ上忍にさほど驚きもせず、空いている椅子に座らせてその頭をゆっくり撫でていました。
いつもの事なんでしょうね、二人とも黙って穏やかな時間を大切にしているようでした。
あたしを撫でる時と同じ目で、イルカ先生はずうっとはたけ上忍の事を想いながらあたしのよく似た色の髪を撫でていたんだなあって思ったら、何だかきゅんとしちゃいました。
だって、あの頃からだとゆうに四年たってますよ。凄くないですか。多分ね、はたけ上忍も同じ位の年月イルカ先生を見ていたんでしょうね。
バッカみたい、こういうの両片想いって言うんですよ。バカップルとかね。
ああもぅ、あたしお酒飲みたいです。…解ってます、イルカ先生が怒鳴り込んで来そうで飲みませんって。
え、あたし偉くなんかありませんよ。仲を取り持って…まあ結果的にそうなりましたけど。

あの…あたし、その後すぐ特上の昇格手続きで忙しくて二人がくっついたとは噂で聞きましたが、普段の様子とか知りたいんです。ご存じじゃないでしょうか。
ああ、失恋した相手が二人揃ってたらですか…もう夏空みたいに吹っ切れてますから大丈夫、応援しますよ、虹も出しちゃう。
えっ、待ち合わせてるんですか。二人とも来ますか、ホントに。
じゃあ色々聞いていいでしょうか。いいんですね、根掘り葉掘り聞いちゃいますよ。

あ、ホントに来た。
イルカ先生こんばんは。はたけ上忍もご無沙汰しております。
え、何で居酒屋にいるかって…仕事なんですよ。すみませーん、待ち伏せしてました。あはは。
猿飛上忍が何を聞いてもいいって、ちょっと騙したみたいですが許可もいただきました。
猿飛上忍、これがあたしの特上での初仕事なんです。実は既に昇格してました。
えへへ、中忍の方がかわいそうって思ってもらえるかなあって。忍びがそう簡単に真実を言うわけないじゃないですか。
専門は諜報ですけど、新人は訓練として月刊木ノ葉の編集部から始めるんです。あ、新人って解ると取材でナメられちゃうから内緒ですよ。

さていきなりですけど、お二人にインタビューさせていただきます。
四年間の想いを全部吐き出してもらいますよ。
答える気はないんですか、ご両人。じゃ嘘八百書きますよ。
…そうそう、言えばいいんです全部。恥ずかしいなら、イルカ先生は酔うと饒舌になるって聞いてますから、猿飛上忍が酔わせてくださいね。
えー猿飛上忍に拒否権はありませんよ、さっきの奢りのお酒が賄賂です。飲んだ分を吐き出しますか、いいんですよ、紅さんにあたしをナンパしたって言い付けます。
あたし、紅さんに可愛がってもらってますから。どちらを信じるんでしょうね。
言った言わないになると困るので、念の為に録音しますね。
それでははたけ上忍もイルカ先生も、宜しくお願いいたします。
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