17

逃げません、とイルカは吐息で答え伸ばした両腕をカカシに向けて広げた。
「俺の全てをあげるから、カカシさんの全てを下さい。」
「ああ勿論、命もあげる。」
まるで寝言のように言ってのけたカカシは、イルカの腕の中に収まりながら貴方に殺されたい―と物騒な呟きを落とした。
カカシの思考はぐるぐると巡る。
お互いの気持ちはこれ以上はない程に盛り上がっているが、もう少しイルカを可愛がりたい。だがいきなりくわえたら、気持ち悪くて萎えるかもしれない。多分生理的に勃起させる事はできるだろうけど。
いきり立つイルカの性器を見下ろしながら、くわえてもいいかなんて聞けずにいた。
逡巡に焦れたのか、勢い良く起き上がったイルカが胸を両手のひらで押した。驚き後ろにぺたりと尻を着いたカカシは、意図が読めずに困惑した。
突然背を丸め股間に顔をうずめたイルカが躊躇いもなくそれを口に含むと、熱いぬめりに包まれながらずるりと皮を剥かれて心の準備のなかった身体は仰け反り跳ねた。
「なっ、駄目っ、」
腰を引こうにもすぐ後ろはベッドの端だから、落ちないようにと思えば少しも動けない。股間ではイルカの頭が上下し、ぐちぐちと粘着質な音が聞こえる。
先端を舌で弄られて、もうカカシは我慢ができなかった。イルカの頭を持って口を外そうとしたが、その前に力を入れて思いきり吸われた。
「あぁ、」
仰ぎ見た天井の木目が霞む程気持ち良くて、身体の力が抜ける。だがじんじんと痺れるそれを、またイルカが舐め始めてカカシは我に返った。
「青臭い。」
しかめっ面はまさか。
「飲んじゃった。」
え、とイルカの顔を見詰める。
いとおしい。
むくむくと沸き上がる、愛ゆえの嗜虐心が心を占めた。唇を舐めて笑うイルカに、見る間に膨れながら勃ち上がる自分のものを見せ付けた。
「可愛い事をしてくれるから、また元気になったじゃない。」
お返しと微笑みイルカの肩を押し後ろに倒すと、勢いでイルカのそれが揺れる。あまりのいとおしさに、全身の血液が逆流したかと思う程熱くなった。
見ていなさいとカカシはうっすら笑いながら竿をくわえ、執拗に責め続けた。イルカが身を捩りやめてと泣き出しても、好きで好きで堪らない相手だからやめられない。やめる気もない。
「青臭い。」
意趣返しだと、飲み込む前に舌の上の白濁を見せた。
それを見て真っ赤になって枕で顔を隠すイルカを枕ごと抱き込み、カカシはまだ始まってもいないのにと耳に吹き込んだ。
敏感になっている身体を丁寧に撫で、息を殺して耐えるイルカに目を細める。
一度吐き出したとはいえ、それで終わる訳はない。目的は愛しい人と繋がる事だ。
身を乗り出して軽く唇を重ね、首筋から臍まで舌で舐め下ろす。イルカがそれに気を逸らせた隙に、尻に滑らせた指が探り当てた場所にめり込んだ。
節の目立つ、だが男にしてはすらりと綺麗だとイルカは自分と比較し羨ましく思っていた。性的な目で動きを追った事もある。その長い中指を根元まで入れられ、イルカは官能に背筋を震わせた。
「指、に、」
苦もなく入り込んだのは、油を纏っていたからだと察した。
「強姦みたいなのは嫌じゃない。でも違和感だけは我慢してね。」
頷いて息を吐く。用意周到な男に、少しだけもやもやとした。
「慣れてる。」
答えを聞きたくはなかったが、言わずにはいられなかった。
「実践はないけど、任務の為に勉強したからね。経験豊富なのと、どっちがいい?」
オレは、貴方の初めてが嬉しい。
そんな台詞で堕ちるのは男も女も関係ないんだなあ、と頬が火照る。カカシならどちらでもいい、でも本当は。
「なくていいです。」
イルカは黙って自ら腰を揺すった。続けて。
可愛い、と呟きカカシは中の指を襞に押し付けぐるりと回した。
圧迫感はあれど、考えていたよりは気持ち悪くない。そう思って気を抜いた先で、指が増やされ息が止まった。
首を伸ばしてカカシが大丈夫、と聞く。大きく頷く。
実際はかなり苦しい。けれどカカシを受け入れる為にはもう少し、大丈夫だ我慢できる―。
強張る身体を撫でていたカカシの手が止まった。その手がイルカの片足を肩に乗せると、二本の指を隙間なく包んでいた口が僅かな隙を作った。
「ごめんね、苦しいかもしれない。」
広げる為に、入れていた指を縁に沿って動かした。イルカの緊張が全身から伝わり、カカシは申し訳なさに手を止めてしまった。
「いいから早く。」
尖った声に顔を上げると、潤んだ目の焔がちりちりと皮膚を焼く。その焔でオレを包め、と三本目の指を突き入れた。
流石に三本の指は痛い。だが武器とは質の違う痛みに含まれるものが、イルカに矯声を上げさせた。
そこは、と声にならない声が教えた場所。
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