7

7 イルカ
暗部の方の家なんて来るんじゃなかった。
カカシ先生に見つからない自信はあるが、もしもの事を考えると、この人に迷惑はかけられない。
お茶を出してもらってフウフウ言いながら啜ると高ぶった気も落ち着き、自分の言動を振り返ることができた。やっぱりお茶はいいよなぁ。
「あの…イルカ先輩、大丈夫ですか?」
丸いお盆を持って少し腰を浮かせた正座の状態でためらいがちに聞いてくる暗部さんなんて、滅多に見られるもんじゃないだろう。
「あっ…先輩なんてよしてください。オレはただの中忍です、少し年上なだけなんですから…。それより駆け込んだりしてご迷惑をかけて、たまたまいらっしゃったのも運が悪かったですねぇ。アハハ…いやオレも近くて見つかりにくいトコってだけで選んだもので、いやあ普段から顔は繋いどくものですねえ。」
オレは殊更明るく振る舞い、心配そうな暗部さんから目を逸らす。
この人もお人よしだよなぁ、そろそろ帰ってあげなきゃな。カカシさんはどうしているだろう。まだオレを探しているのだろうか、追いきれないことが判ってるから帰っただろうか。
オレはひそかに手なづけていたカカシさんの忍犬を一匹呼び出した。あまり自己主張しない大人しい子だ。
「やあごめんな。ちょっと教えてくれ、カカシさんは今何処にいる?」
「ふん、何だそんなことか、家に帰ったぞ。」
つまらなそうにお茶の匂いを嗅ぐと、オレの足元に座り込んだ。
「どっちの?」
「自分ちだ。お前、今日はうちに来るって言っただろう?」
鼻を鳴らして、本当につまらないと言って後ろ脚で頭を掻いた。帰ると言うのに引き止める理由もないから、オレは頭を撫でてやって忍犬を戻してやった。
「よくカカシ先輩の忍犬に触れますよね。絶対に他人に馴れないって聞いてるのに。イルカ先輩、流石っす!」
いやぁ、カカシさんを手なづける方が簡単だったけど、とは言わず受付で鍛えた極上の笑顔を此処でも披露し、オレは頭を深々と下げた。
「お世話になりました。ここのところは、トラップの新作を一番にお見せするって事で許して貰えませんか。」
「そんな、頭を上げて下さい、俺困ります。また何かあったら、いえ、なくても声を掛けて下さい。先輩のお役に立てて光栄です!」
いい人だなぁ、明日にでも何か届けようかな。軽くなったオレの心は問題の根本をすっかり忘れ、カカシさんの元へと急ぐのだった。
甘味屋に買い物袋を置き忘れたことに気がついたのは、カカシさんが食卓につまみを並べているのを見た時だった。
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