6

6 カカシ
「イルカッ、」
オレを殴り(優しいあの人はわざと額宛ての上に当てたから軽い眩暈だけで済んだ。愛されてるねーオレって。)バチバチ火花の飛ぶ結界を抜けて、イルカ先生は走って行ってしまった。
姿が見えなくなるまで見送ってから、オレは気付いて慌てた。
「なっ、何が悪かったんですか! ねえ、イルカせん…、」
「黙れ。あんたのこの口がいけなかったんだよ。分かんないかなあ、忍びバカ。」
いきなり食堂のおばちゃんがオレの頬を摘み上げた。リーダー、痛いです。反省します、だからガンタレはやめて下さい。オレの写輪眼でも怖いですぅ…。
オレは引けた腰で、それでも彼を追いかけようと立ち上がった。 オレ達の事を知られたのは、半分は故意なんだが…まさかこんなおおごとになると思っていたわけではない。マスクの下でオレは唇を噛んだ。
「待って! イルカの居場所はあんたには分からないわよ!」
追いかけて来た中忍がオレに向かって叫んでいる。なにっ? どういう事だ?
「じゃあ何処へ!」
息をあげている中忍のために足を緩めて聞けば、昔からあの人にはよくわからないような、広く深い交友関係があるという。
そう言えば二人で歩いていて暗部の後輩に会った時、イルカは『いつもお世話になります』と言ったのに! なんで気づかなかったのか…誰にでも挨拶してたからうっかりしていたんだが。
あーこいつも知り合いなんだあイルカ先生はすごいなあって、普通に思っちゃったよオレ。
「知ってるのか?」
「全然分からないわよ。多分犬を使っても無駄だろうし。」
オレは眉間に皺が勝手に寄るのを揉みほぐしながら、イルカ先生のストーキングに何回も失敗した事を思い出した。
走っていた足が止まる。じゃあオレ、どうしたらいいんだ…。
自分の足の爪先を見つめながら、長い溜息を零した。参った。
「家に帰ってなさい、きっとイルカも落ち着いたら帰るから。ねっあんたもよく考えて、自分の言動に責任持ちやがれよっ。」
バンバンと背中を叩かれ、オレは一瞬息を詰まらせた。流石イルカ先生の仲間だ、おんなじだよあの人と。
オレはうなづいて帰る事にした。
「そうする。あんたらもこれ以上あの人をからかわないでくれよ。かなり恥ずかしい事を言わされたみたいだしな…次からはそーゆー事はオレに聞け! 嬉し恥ずかし愛の交歓を、全て包み隠さず話してあげよう(エッヘン)。」
「はいはい、今度ゆっくりとね(縛り上げたる)。」
いつの間にか寄って来たイルカ先生誘拐団は、あの人が忘れた買い物袋をオレに渡して、それぞれ散っていく。
何だかなぁー疲れたなぁ。イルカ先生は今夜帰って来るかな来ないかな。あ、ちょっと胸が痛い。とにかくこの買い物を冷蔵庫に入れて、酒を用意して待っていよう。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。