5

5 イルカ
「さあカカシ、あたしに逆らう気がまだあるなら、タイマンでおいでよ。」
受付の事務員が笑う。貴女、任務の改ざんなんてしませんよね。
「あたくしがお相手致しましょうよ。」
すっと身体を乗り出して、近所の町会世話役が拳を握った。
すみません、あのアパート居心地がいいんでもう少し居させて下さい。追い出さないで!
オレは全てを放棄することにした。
「カカシさん、もういいです。オレは平穏に過ごしたいんです。貴方と一緒にいたいから、逆らうのはよしてくださいよ。」
わかっているでしょう、と火影より恐いのは主婦パワーなんだと匂わせて、立ち上がったカカシさんの腕を引いて座らせる。
「流石イルカ先生、餡蜜スペシャル二段重はいつでも食べられるように取り計らっておきますね。新作もお楽しみに。」
おかみさん、まだ聞きたいことはありますか? いつでも何でも喋っちゃいます。
オレの心を読んだかのように、カカシさんが叫んだ。
「何も言うなっ、もっと美味しい物を毎日食べさせてやるから、そんなもんに釣られるんじゃないですっ!」
結界が強くなって、いよいよ逃げられなくなった。言っちゃったよこの人。
オレは膝の上の握り拳を更に強く握り、奥さん達を睨んだ。
「何でも話します。だからこれ以上虐めないで下さい。」
「あら、カカシが悪いのよ。イルカ先生を虐めようなんて、誰も思ってないわよ!」
心外だわと、皆でカカシさんの顔を見る。
「でもイルカ先生優しいわねー、こんな奴の事心配してくれるの。今回はイルカ先生に免じて、」
ホッと息を継げば、次の言葉はオレにかけられた。
「個人面談が近いのよね? 希望者だけってことだけど、此処にいる全員希望するから宜しくね。」
「はい、判りました。」
とつい、オレは職業意識丸出しに、勢い良く白い歯を見せた効果的な笑顔を…そして固まった。
個人面談てことは一人ずつ、って事で。
マズイじゃねーか!! 最高にマズイじゃねーか!!  オレってまな板の上の鯉? なんで素直に喋っちゃいますって言ったのに、もっと酷い状況になるんだよっ!
「カッ、カカシさんのせいだぁ、馬鹿あぁぁぁぁ。」
オレにへばり付くカカシさんを殴り飛ばし、結界を破って逃げた。後の事なんか知らない。
オレはそのまま走って、カカシさんの知らないところで仲良くなった暗部の人の家へ逃げ込んだ。
実はトラップ専門家のオレは陰で暗部に指導もしている訳で、でもこれだけはカカシさんに絶対言わない。中忍にしてはちょっと強いかなって位がオレのベストポジションなんだ。
トラップ開発してますなんて言ったら、カカシさんはオレを任務に連れて行くだろう。そしたらかっこいいあの人に、オレはもっと惚れちゃうから。やっ…なんて恥ずかしい事を…顔が熱いぞ! 自分が馬鹿だって分かってるんだけど、だって好きなんだもん!
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