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十三
「それはどういう事なの、イルカ先生。」
カカシが解らないと聞き返すと、イルカはぐいと涙を袖で拭いて立ち上がった。
「放っておかれた俺の半年を、返してくれたら何処へでも行っちまえ。」
「う…それは…。時空間忍術を四代目に習い直してきます。」
「アホか、あの世で教わるんですか。」
馬鹿野郎、とイルカが手を広げて抱き着いたのがカカシには信じられなかった。
「一人で振りを続けてたら皆が応援してくれるようになって、俺もこの前会ったらカカシさんでなきゃって、男でも構わないって思ったんです。」
「えっと、…周りからの洗脳じゃないの? オレが黙って行っちゃったから引っ込みもつかなかったしね。」
ぎゅっと抱き締められても、カカシはイルカを抱き締め返して良いものか悩む。
「そんなの関係なく、俺がカカシさんを好きなんだからいいんです。」
「いいの?」
「いいんです!」
「いいんだ!」
間抜けな確認だと二人して笑い、ふと訪れた静寂に熱が高まる。
「じゃあ遠慮なく。」
カカシはイルカを抱き上げ数歩でベッドにぽんと落とした。上から囲い込み、了承の言質取ったからとイルカのシャツを頭から抜いてしまった。
「意味が違う!」
「オレ、アホで馬鹿野郎だから解らなくてね。」
「いちいち揚げ足取るな、黙れ!」
煩いのはどっちだと、口を塞いで舌を絡めた。照れ方が可愛すぎて我慢できない。
イルカを口付けで黙らせたまま、カカシは双方の着衣を剥ぎ取った。
一枚しかない掛け布団は埃だらけで放置したままだし、明かりも煌々と部屋を照らしている。けれどイルカの黒子一つも見逃したくないし、どうせ乱れれば布団は要らないのだ。
身体中を噛んで舐めて追い上げると、イルカの中心が張り詰めてカカシを誘う。
「オレ、ゲイだけど初めてだから。」
「恥ずかしい事言わないでいいから。」
全く口が達者なんだから、とイルカが真っ赤な顔を腕で覆い隠す。それににやつきながら、カカシは立ち上がったイルカの男根を口に含んで扱き出した。
イルカは慌てて引き剥がそうとカカシの肩を押すが、まるで力が入らない。自分がこんなに快楽に弱いとは思わなかった。
カカシだから、そうだ、恋人だからだ。
弾けて波が引くと羞恥が湧いたが、またすぐに追い立てられる。男の乳でも、出したばかりで身体中の皮膚が敏感になっているから粟立つ程の快感だ。
「カカシさん急ぎすぎ、あっ、駄目っ。」
翻弄されながらも、イルカはカカシのモノに手を伸ばした。気持ちよくなって欲しいと両手で包み込めば、カカシの切ない吐息が漏れ聞こえる。
こんな時は同性で良かったと、的確にポイントを攻めてカカシにも喘ぎ声を上げさせる。
それが不味かったらしい、カカシがサイドボードからピンクのボトルを取り出してイルカに見せた。
「アスマがね、紅にあげたら馬鹿にするなって叩かれたんだって。」
女性用の媚薬入り潤滑ローションなどまだ必要な年でも、そんな冷えた関係でもないだろうとイルカは頷いた。
「一生要らないって、もう一発叩かれたんだと。」
それほど愛されちゃってる事が漸くあいつも解って、処分するのを貰ったんだ。
男でも効くのか試したいし傷は付けたくないし、とカカシは優しいんだか鬼畜なんだか判らない。
「んあぁ…早く…、もっと。」
思わず口走った本心がカカシに聞こえたかと、イルカは羞恥に唇を結ぶ。ローションのお陰で指が三本でも痛みはなく、内部に溶けたそれの効果でむずむずとした違和感も快感へと変化して、イルカは僅かに恐怖を覚えた。未知の世界の扉を開けたら何が待つのか。
試しにと自分の亀頭にローションを塗ったカカシは、やっぱりオレは馬鹿だと涎を垂らしていきり立つモノを抑えるのに苦労した。
薬が効きすぎたのだろう、何度交わっても二人とも治まらない。イルカの締め付けは、慣れてきたのかカカシのピストン運動にしなやかに絡み付いている。
「搾り取られる…。」
既に限界値を越えて、カカシはいつも通りのスタミナ不足を感じていた。
イルカの腰骨に手を当て勢いよく打ち込み続けると、イルカの脚がカカシに巻き付きそろそろ上り詰める事を教えた。
一緒に、と差し出された両手の指の間に指を差し込み握り合う。
背中を反らして息を詰めたイルカに一瞬遅れてカカシが歯を食いしばった。

「幸せすぎて夢だったなんてありそうで、オレは寝たくない。」
「起きたら目の前には俺がいますから。」
駄々を捏ねるカカシがいとおしく、イルカは抱き寄せて眠るまで頭を撫でてやった。
ことことと、鼓動が重なる。

髪も纏めず鞄を抱えたイルカとその手を引いて走るカカシが目撃されたその朝から、時間も期間も限定されない本当の恋人の時間が始まった。
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