台所で鼻唄が聞こえる。
梅雨の蒸し暑さに料理なんか嫌だと、仕事上がりを理由に転がっていれば、じゃあ代わりにと立ち上がって、ガタゴトと何やら音を立て始めたのだ。

イルカせんせー、お米なーい。
何でもいいです…。
イルカせんせー、冷蔵庫に何もなーい。
だから何でも。
イルカせんせー、賞味期限の切れたうどんでいいですかー。
はいはい。
イルカせんせー、薬味がなーい。
プランターに長ネギ植わってるでしょ。

あーだりーし、ねみーし、腹減ってるし。自分でやった方が早かったけどもう動けねー。

イルカせんせー、めんつゆなーい。
ああっ?なんだと?

結局立ち上がって台所へ。鍋に少なめに水を張り、洗った昆布を入れて弱火にかける。その間にうどんを水にさらし、ざるに盛る。
醤油を水の倍の量、どぼどぼと鍋に入れて酒と味醂を適当にたぷっと垂らす。味をみて、もう少し甘くと砂糖を匙に取って鍋へ。沸騰する直前に火を止めた。小皿のつゆをほらと突き出すと、ずずっと啜り笑顔でうなづく。

いい味ですね。それじゃあ、食べましょ。

ああやっと終わった。余計疲れたってのに、目が覚めちまっただろーが。畜生、全部喰ってやる。
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