いい人ぶるのは案外しんどいもんだと、今更気付いた。気のある相手には特にさ。ああまた、溜息が出る。
一人の夜は考えすぎちゃっていけないね。だから今夜も一人、夜をさ迷うんだけど。

一人になりたい、でも一人は嫌だ。一瞬誰でもいいと思ったが、でもあの人じゃなきゃ嫌だ。
わかんねーよ、オレ。
体と心は別だった筈。でも、萎えちまうのはどうしてなんだか。熱は篭っているのに吐き出せない。

ぐるぐる巡る想いのように、オレは静かな夜の中をうろついた。
居酒屋の前で見付けたあの人は、職場の友人達と飲んでいたんだろうか。散会して、一人気持ち良さそうにふらふら歩く後ろ姿に声掛けて、家まで送ってく道すがら。
襲われますよ、…オレに。冗談ならこうして笑って言えるのに。
狼になりたい。一度でいいから。嘘だ、一度だけなんて嘘だ。
でも体を支えるために抱いた肩は、今だけはオレのもの。
このまま。
狼になりたい。

部屋の前でお休み、と肩に置いた手を離した、ら。振り向いて涙を溜めた目で、オレを見詰めて。

狼になって。
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