一昨日朝から雪が降って降って降り積もり、殆どの店が戸口を雪に覆われて閉店休業となっている今日はクリスマス。そう、イブじゃないクリスマス本番の日。
異国の行事も大分馴染んだ木ノ葉の里だが、信仰心の薄い忍びらしく宗教色など一切ないただのお祭り騒ぎと化している。周りの国々も似たようなものだ。
でまあオレ六代目火影は、緊急でない限り任務や修業を休んでいいと一昨日の夕方に公言したんだ。みいんなひと月も前からそわそわして、やたらと家族親戚絡みの用事を言い訳に休みを申請していたからね。
暫く雪が降り続くという天気予報で、一昨日昼すぎにオレは決断した。昨日今日の分の依頼者達に連絡を取り任務延期を頼めば九割方は承知してくれたので、残り一割の指示を出し報告も無理して即日提出する必要はないと言い渡す。
そうしてオレも久々に早い時間に帰宅し、温かなイルカを抱いて昼まで惰眠を貪った。

ねえねえカカシさん、とイルカが外の雪景色を指して言ったことから一時間も無駄な口論になっているんだけど。
「言わないでしょ、それはおかしいでしょ。」
「言います。赤い方はそう言うんだから白だって一緒でないと。」
「それはあんたの考え方で、世間一般はそう言わないけど。まともに勉強してこなかったオレだって解る事だよ。」
「世間もカカシさんもおかしいんです。俺が正しいんです。」
「文法上はどうなのさ。」
「言葉は時代と共に変わっていくものじゃないですか。」
「これは名詞だって言ったよね。名詞って言葉自体が変わっていいの?」
「いいでしょう。主観的な言い方は見る立場で変化してもおかしくない。」
「名詞が主観的でいいんだろうかね。」
「いいんです。」
「固定されるから名詞なんじゃないの?」
「名詞が変わって何が悪いんです。」
「いやいや、そう思うのあんただけでしょ。誰も頷かないし言わないけど。」
「言うんです! まっしろじゃなくてまっしっしろなんです!」
「…まず、まっかっかの語源から調べてよ。今二人で言い争いしたって時間の無駄でしょう。」

せっかく二人きりでいられるんだから、聞きたいのはオレを求める言葉だけ。
少し腹をたてながら口を塞いで黙らせた。ちゅうと音をたてれば朱の色がイルカの顔から全身に回っていく。
そうそういい子だね、と言うと身を捩って拗ねるそれこそまっかっかなイルカが可愛くてしかたない。

音もなくまだ降り積もっていく雪は目に痛いほど。
まっしっしろ。…ん?
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