大分苦労した。人生の大半を忍びとして人を殺し、身近な大切な人々を殺された。
どうしてと泣きながらクナイを振り回し、刀で切りつけた。
可愛いと思った部下達が、散々な目に遭って。
それでも彼らは着いた膝をふんばって立ち上がった。
案外人生の最後は悪くなかったかも、と思えたのは友のくれた左目を失って世界が落ち着いてからだ。
何もしてやれなかったと長年悔やんだ友には、最期に感謝の思いを伝えられたし。
振り返れば、概ね良い人生だったと思える。
心残りは一つだけあるけど。…まあ一番の心残りだけど、胸にしまって温めながら旅立つ事ができるんだからいいやね。
オレの人生、最後はプラマイゼロじゃなくてほんのちょっとマイナスだったけど。
幸せだぁね。

「おいこら、何がマイナスなんだよ。」
「…イルカ先生が手に入らなかった事…。」
「ならなんで、手に入れる努力をしないんだよ。」
「無理だもの。」
「解んねえだろ、起きてやってみろよ。死ぬなよ!」

「ん…誰が手を握ってんの?」
「イルカです。」
「イルカ先生の幻覚に幻聴だなんて…いよいよ意識が混濁してきたかなぁ。うん凄い、これで本当にプラマイゼロだな。」
「何を冷静に分析してんだ。起きろ、あんたは生きてんだよ。」
「…え?」
「思い出せ、調子こいてSランクに一人で出やがった火影様。若者に任せときゃいいものを、汚れシゴトだからって引き受けてな。」
「…ああ、そっか。」
「腹に刃物を突き立てたまま戦いやがって。運良く勝てたけどな、運良く。」
「うん、オレ生きてるね。」
「あんたはプラマイゼロで死ねるんだろうが、俺はマイナスの底まで落ちたまま死ぬかと冷や汗かいたぜ。」
「は?」
「あんたが死んだら、俺は金輪際プラスにならねえんだって事だ!」
「じゃあ生きてたら?」
「プラスが天を突く位になるんだよ。」
「よし、老衰で死ぬまで一緒だ。」
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