忘年会から帰ってきたイルカ先生は、頭にティアラを乗せていた。
ティアラだ。まん丸い王冠ではなく後ろが開いていて髪に挿す、ティアラだ。
ほんのりと染まる頬に潤んだ目、ほつれた髪はうなじにちらほら、それにキラキラ輝くティアラを乗っけたりしてたら、可愛すぎて欲情するもんだ。

寒いけどよく晴れた朝、寝乱れた布団の脇にこれまた散乱する二人分の衣服を見たら、また欲情してもう一戦。
家の中で戦うオレ達はよれよれで、でも任務並みに清々しい。
と言うと殴られたけど。

「で、今年の称号は。」
「チョーカーうみの。」
「何ですか、それ。」
「チョーク投げ百発百中なもんで。」
クナイや手裏剣で綺麗に木ノ葉マークを作れるイルカ先生は、居眠りとかお喋りに忙しい生徒に後ろ手にチョークを投げるのも得意だそうだ。
教師達の忘年会ではその年の功労者を表彰するのだが、偉い人達が帰った後でおふざけで表彰式が行われる。
「今年は、他にゆるキャラーとか、えーと。」
店に半分記憶を置いてきたらしい。
「ゆる?」
「体格が良くて可愛い系の奴が。」
ああ、うん、職員室で肘付き椅子から一人で立ち上がれないのがいるよね。オレも抜くのを手伝った事あるもの。
「先生、去年貰ったのはまだオレには複雑な気分。」
「何を今更。去年の話でしょうが。」
そうは言うけどさ、思い出したらムカついてきたよね。だって『癒し姫』なんて称号貰って、ミスコンテストのようなケープを纏って帰ってきたんだよ。ピンポーンはーいお帰りってドア開けたらそりゃ超絶可愛くて、あん止めて良いではないかと玄関で立ったまま抜かずの二発で。よくそれで終わらせたなオレ。
ま、それはともかく、付き合ってるのを公言しなかった結果だからオレは反省して、翌朝アカデミーの職員室と受付で交際宣言をしてやったんだ。
イルカ先生は一日からかわれて帰った途端に大泣きして、そんなに迷惑だったかとオレも泣く寸前だったけど、実はオレの方が隠したかったんじゃないかってずーっと悶々としてたんだって。だから馬鹿だねってぎゅっと抱き締めてあげたら締めすぎて先生失神しちゃったけど、それがオレの愛の強さなんだって解ってくれたから良しとして。
んで、大晦日にイルカ先生んちに体一つで引っ越したんだよねオレ。入り婿って呼ばれて、なんか恥ずかしいけど嬉しい。

春くらいにはさ、オレは六代目火影になっちゃうんだけど。
来年のイルカ先生の称号は『火影の嫁』がいいなって、こっそり裏から手を回す事を考えちゃうわけだよ。しないけど。
いや、それじゃイルカ先生のプライドを傷付けるかな。うーん。
あ、『イルカ先生の婿は火影』ってのいいな。うんうん、それに決めた。

さてイルカ先生、予約してある年越し蕎麦を食べに行きましょうか。
オレ達も細く長く、ずーっと一緒に居られますように。
あ、海老天は先生にあげるから、蒲鉾頂戴ね。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。